ベストセラー書籍に「黄金の法則」はあるのか 「売れる文章」を見極める驚異のアルゴリズム

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「読ませる」観点でいくと、魅力的なキャラクター造形も不可欠だ。ベストセラーの主人公は、必ず何かを必要とし(need)、何かを求めている(want)。売れない小説は、この二単語の使用頻度が低く、消極的なフレーズが多い。

さらに対照的なのが、売れる小説の主人公は、主体性の高い言葉との結びつきが強く、行動的であることだ。実行する(do)、考える(think)、達成する(reach)といった動詞が典型的だ。このデータは、『ミレニアム』シリーズや『ゴーン・ガール』、『ガール・オン・ザ・トレイン』などのダークヒロイン小説ブームを下支えする要素だと著者らは指摘する。

感覚としての理解ではなく

『ベストセラーコード "売れる文章"を見きわめる驚異のアルゴリズム』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

さて、ざっくりとデータを見てきたが、それなりに小説を読んできた人からすれば、どれも感覚として理解している話かもしれない。だが、最初にも述べたけれど、小説の評価を定量的かつ客観的な証拠として示せたのは大きいし、ひじょうに興味深い。

ただし、言わずもがな、これはアメリカの文芸出版市場が舞台である。日本にそっくりそのまま転用とはいかない。しかし、本書を監修している統計家の西内啓氏によれば、著者らの行った解析を日本国内でもビジネスとして可能だそうで、出版関係者でお悩みの方はご相談ください、とのこと。

それにしても、コンピューターが人間の創造性までソートできるようになった事実には唸らざるを得ない。AIが小説を書いたというニュースも記憶に新しいし、揉み手をしつつAI先生とアルゴリズム先生のご機嫌うかがいをする日は近そうだ。

西野 智紀 HONZ

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にしの ともき / Tomoki Nishino

1992年生まれ、長野県出身。大学卒業後、ぽつぽつ書いていたブログ「活字耽溺者の書評集」をきっかけに仕事の話をいただき、以後書評家を名乗る。産経新聞、週刊読書人ほか、いくつかの媒体に寄稿。海外文学(ミステリ、サスペンス等)の紹介が中心だが、基本はフィクション、ノンフィクションを問わず濫読。好きなジャンルは、事件、ルポ、自然科学などの探求(探究)もの。

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