アウシュヴィッツで考える、麻生発言(上)

アウシュヴィッツ強制収容所を訪問

ホロコーストは、プロパガンダだと思われていた

ガス室の跡と、膨大な量の人骨の灰が積みあがった地層

当時、ナチスによる大量虐殺は噂が広がっていたが、それを本気で信じる人はあまりいなかった。ドイツほどの文明国が、毎日、ものの10分かそこらで、数千人を殺しているはずがないじゃないか、と。ドイツのユダヤ人は政府の同化政策も進み、名前もドイツ式に改められ、第一次世界大戦もドイツ兵として戦った人達であり、そんな人達を虐殺するはずがない、と。ヒトラーもチャーチルもプロパガンダ合戦をするのだから、きっとその類だろう、と。

しかしそんな中、ソ連軍が入ってきてアウシュヴィッツ収容所を解放したわけだが、そこにはおびただしい数の死体と隠滅を図って破壊されたガス室などが残されていた。地層を掘り返せば一体が灰となった人骨で、犠牲者の数はこの収容所だけでも150万と言われる。
(ホロコースト全体では600万の犠牲者が出た、とも言われている)

犠牲者はよく知られているユダヤ人のみならず、その多くがポーランド人であり、またロマ人や“政治犯”、同性愛者も含まれていた。また狭い部屋に詰め込まれた収容者は骨を皮が覆う骸骨といった様で、成人の体重は20キロ台、30キロ台まで落ちていた。

ナチスの強制労働の実態

強制収容所のユダヤ人生存者の証言によると、薄い縦じまの囚人服で厳冬のアウシュヴィッツで強制労働に従事させられ、与えられた食事は200キロカロリー、成人に必要とされる分量の10分の1以下であった。多くの収容者は数か月で働けなくなり、働けるかどうかを示す低い棒高跳びのようなテストに落ちると(つまり少しのジャンプすらできないくらい衰弱していると)、すぐにガス室に送られた。

写真に写る一人ひとりのが、この収容所で凄惨な最後をむかえた

ユダヤ人処刑の方法は、よく知られたガス室のみならず、(音の出ない)拳銃による処刑、牢屋に閉じ込めて食事を与えない餓死、また狭い部屋に押し込められ、何日も立ちっぱなしにさせて衰弱死させる方法もとられた。また人体実験のために生きながらにして実験台になった人も多数おり、脱走や反抗を試みたら、その班に属する人全員が見せしめで処刑された。

わたしが収容所の実態がガイドさんによって説明される中、たまたま他のグループの観光客が大声で談笑するシーンに出くわした。極めて冷静で落ち着いた感じのガイドさんだったが、すぐさま彼らに駆け寄り、“ここは世界最大の墓場だ。お願いだから、犠牲者に敬意を払ってくれ”とその心ない観光客を諌めていた。

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カーリング人気萌芽の時代から、平昌五輪での銅メダル獲得まで戦い抜いてきた著者。リーダーとして代表チームを率いつつ、人生の一部としてカーリングを楽しめるにまで至った軌跡や、ママさんカーラーとして子育てで得た学びなどを語る。