ゴミ屋敷に商機を見出した男の波乱万丈人生 夜逃げ、起業、倒産…人はそれでも立ち上がる

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客に頼まれたチケットを取るために一晩中並んだ。花見や花火の会場にビニールシートを敷いて席取りをした。幼稚園の入園手続きに、親御さんの代わりに参加した。そんな数多の仕事の中に、ゴミ屋敷清掃の仕事もあった。

「いよいよ崖っぷちな状況で、理想も理念もなかったよ。いつ電気が止まるか、いつガスが止まるか、って生活してるのに、そんな悠長なことを言ってる場合じゃなかった。

大便が山盛りになったトイレを掃除して、体中クソまみれになったとしても、仕事が終わったら、手の上に1万円、2万円と金が載る。それでとりあえず、家族は食っていくことができる。それが何より大事だった。

若い経営者が、理想や意義を語っているのを見るけど、気持ちはわかるけど正直、まずは稼げよ、と思う。理想や理念、意義や大義名分は、稼いでいるうちに、後からついてくるものだと思う」

ゴミ屋敷清掃に力を注ごうと決めたきっかけ

とにかくくる仕事は内容にかかわらず受けていた佐々木社長だったが、1つの現場がきっかけで、ゴミ屋敷清掃に力を注ごうと決めた。それはとある1人の女の子の部屋の清掃だった。

胸の高さまでたまったゴミ

いつものように電話で依頼を受けて、待ち合わせ場所に行くと、いかにも普通の若い女の子が立っていた。聞けば、都内でも有数の有名大学に通っているという。街ですれ違ったら、絶対にゴミ屋敷に住んでいるとは思わないタイプの女性だった。

その子の案内で、一緒に自宅アパートに行く。学生用の、小ぶりの物件だった。

女の子は鍵穴に鍵を突っ込んでカチャッと回すのだが、なかなかドアを開けようとしない。よっぽど中を見られたくないのか、1分くらいジッとしている。やっとドアを開けると、中は胸の高さまでゴミがたまっている、本格的なゴミ屋敷だった。

「今だったら、月に一度くらいは依頼がくる、ちょっと大きめの現場、という感じなんだけど、当時はそんな大きなゴミ屋敷を清掃したことがなくて、思わず後ずさりしそうになった」

ホームページでは「経験豊富」とうたっていたので何気ない顔をして内覧をしていたが、内心は動揺していた。

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