なぜ日本の河川はやたらと殺風景なのか 自治体が決断すればパリにだって勝てるかも
スイスのバーゼルでは、夏になると浮き輪をつけてライン川をぷかぷか下っていく川下りが行われます。この浮き輪はちょっと特別な浮き輪で、その中に自分の服が入れられる。みんな流れに乗って川を下っていって、途中で川岸に上がって服を着ていくというだけの遊びです。それだけ暇なんです。
観光のあり方も違います。ドナウ、モルダウ、ライン、アルノといったヨーロッパの河川はすべて両岸に歴史的建造物が並んでいる。じゃあ東京の隅田川はどうかといえば、川岸から目に入るのはマンションや商業施設であって、歴史的建造物は見えない。その意味では、東京の川よりも京都の鴨川のほうが可能性はあるのかもしれないけど、日本の河川を有効活用していけばすべてが観光的・商業的なものに向いているかといえば、それはなかなか難しいと思います。
中村:ライン川下りを最初に見たときは「なんなの、これ」と思いました。人がたくさんおぼれているのかと思ったんです。
木下:確かに日本人とは時間の過ごし方が違いますよね。
「遊泳禁止」「釣り禁止」などの「規制」はクリアできるのか
――では日本での事例も見ていきましょう。まず大阪・中之島。ここは都心に近い水辺ながらにぎわいが失われていましたが、2012年から新鮮な魚介を販売する朝市やオープンカフェを作るなど社会実験を重ね、少しずつ施設を増やしてきました。さらに2016年には「中之島バンクス」というレストランなどがある施設をオープンさせにぎわいを取り戻しました。
また和歌山市では、「水辺座」という日本酒バーが川のほとりにオープン、人気です。
吉里:和歌山市の「水辺座」は、衰退した和歌山の街を活性化するため、県職員だった方が、お城のお堀だった水辺に注目し、退職してオープンさせたお店ですね。
野尻:この店ができて「それまでになかった価値が生まれた、あるいはコミュニティが豊かになった」といった成果は出てきているんですか?
吉里:兆しは見えてきています。この店だけではなく、和歌山の堀川沿いのいくつかの物件でプロジェクトが動き出しています。
野尻:川を利用しようとすると、規制の問題に直面しますよね。そこはどうなっているんですか。
吉里:水辺座では実験的に筏を係留させて、その上で飲食を楽しむということもしています。本当は川面に突き出した建造物を設置したいのですが、現状ではやはり難しいですね。
岩本:僕は小さい時には八王子の汚い川でガンガン泳いでいましたけど、今はそもそも「泳いじゃいけません」「釣りをしちゃいけません」ということになっていますよね。
野尻:このアライアンス・トークのプロジェクトに、瀬戸内のある自治体から海辺の施設の再生相談が持ち込まれたので、先日視察に行ってきました。ものすごくいい場所なんですが、目の前の海沿いには「泳いじゃいけません」「釣りしちゃいけません」という看板がバーッと並んでいた。それだけでビジュアルが非常に悪いんですね。
岩本:川岸でバーベキューもできませんよね。あれはリスクを防ぐためなんでしょうかね。
(ここで会場に来ていた国土交通省水管理・国土保全局の田中里佳さんから手が挙がる)
田中:お話に割り込んでもいいでしょうか? 国土交通省で河川を担当している者です。
――(パネリスト一同)どうぞ、どうぞ。
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