ハリー杉山「最大の失敗が最大の宝になった」

勝利よりも勝ち誇るに値する敗北がある

オックスフォードを落ちた僕は、ロンドン大学で中国語を専攻することにしました。そして、ロンドン、北京と渡り、またロンドンに戻って卒業するはずが、日本に帰国することになります。すると、縁があって、2008年にテレビの仕事をいただいたのです。それをきっかけに芸能活動をスタートした僕は、5年後、NHKの番組で父をインタビューすることになります。場所は子供の時から通っていた日本外国特派員協会。泣き虫で、サスペンダーズ姿のおかっぱ頭の子供だった僕はもう大人です。いっぽう、当時と服は変わらなくても、過ぎ去った年月の長さは父の身体に跡を残していました。

暗くて絶望的な経験は人生の糧になる

テーマは父と息子。僕がオックスフォードを落ちたことをどう思っていたのか? インタビューの最後に聞きました。“You failed upwards my son...and I am proud of it.”「君は上に向かって失敗した……そして私はそのことを誇りに思うよ」と、父は言ったのでした。

この一言でどれほど僕は救われたことでしょう。世の中の捉え方が一気に変わった瞬間でした。父が僕の今の仕事を誇ってくれていると思うと、長年背負っていた十字架が急に降ろされたように感じました。

失敗、挫折、悲しみ……。暗くて絶望的な経験は人生の糧になる。そう思うと日々の生き方、アプローチは変わるのではないのでしょうか? そう言えば、父が尊敬している哲学者のモンテーニュも言いました。

“世の中には勝利よりも勝ち誇るに値する敗北があるものだ”

この言葉の意味を本当に理解している人は多くないかもしれません。父の一言で、僕はそれを理解できました。父の、ジャーナリストの言葉の力はやはり偉大です。

世界が変わる激動の年になりそうな2017年。4月から新しい環境に飛び込む人も多いでしょう。皆さんにも上に向かった結果としての失敗がおとずれることもあると思います。敗北は辛いものですが、悪いことばかりではありません。

(Words: Harry Sugiyama/Illustration: Hiroaki Seto)

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