炎上恐怖症?社会問題を扱う広告は死ぬのか 社会問題に「口をつぐむ」広告主の胸の内

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フェイクに敏感になった人々

「ちょうどペプシのCMのように、社会の時流に添ったキャンペーンは顧客の共感を得る手軽な方法として、多くのブランドに利用されてきた」と説明するのは、サンフランシスコを本拠とするエージェンシー、トラクションのCEO、アダム・クラインバーグ氏だ。「だが人々はフェイクニュースややらせにとても敏感になっている」。

人々の関心が高いホットなテーマをタイミングよく取り上げ、クールなTVコマーシャルに仕立て上げるという手法は、ここ数年の標準的な戦略になっているが、単に社会的、政治的理念に賛同するだけでは信用を得られないことに、ブランドは気づきはじめた。そのコマーシャルが確固とした洞察に基づいたものでなければ、ただ時流に乗ろうとしているだけであることが簡単にバレてしまうのだ。

また、場合によっては、まったくの善意による取り組みが完全に裏目に出ることもある。スターバックスのバリスタが人種についての会話を促そうとした試みを覚えているだろうか(東洋経済の記事)。

あらゆることが政治的な意味を帯びるようになったいま、ブランドとエージェンシーは、ごくわずかであっても政治的なことがらに触れたくないと考えている。

「この国(アメリカ)は、よくいえば葛藤、悪くいえば分裂している。このような時代の流れにうまく乗ることは簡単ではない」と、180 LAのジェルネール氏はいう。「それは、信じられないほど多くの文化的知識を動員し、この手のキャンペーンを手がけた経験をフルに活かして、信頼の獲得にフォーカスするという作業だ。そして、そうした作業をすべて行ってもなお、クライアント側は実際に実行するには一定の勇気を必要とする」。

多くのブランドは、こうしたキャンペーンが自分たちの利益にならないと考えはじめている。トラクションのクラインバーグ氏は最近、ある大手小売企業のクライアントと話をした。その企業のCMOは、キャンペーンで社会問題を取り上げようというクラインバーグ氏の提案に二の足を踏んだ。CMOによれば、そのブランドは「決して目立つことなく、どのような立場も採らないように」と意識的に取り組んでいるのだという。何らかの立場を公言すれば顧客の半分にそっぽを向かれる可能性がある、とそのCMOは述べた。

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