このような会話の多くは、戦略性の欠如、ミスコミュニケーション、ノウハウの活用不足から生まれています。
前出の例では、ベンチャー側は、なぜその技術がユニークなのか、競合との関係でどれくらい優れているのか、相手の会社のどの事業に効果をもたらす技術なのか、具体的な開発スケジュールとハードルとなる課題は何か、などを説明する必要があります。
断るとしても理由を明示するべき
また、大企業の側も、過去の取引実績がない企業との連携には、信用調査や社内稟議(りんぎ)のプロセスがたいへんなこと、事業部門が納得する技術的なデータが必要なことなどをあらかじめベンチャー側に言っておく必要があります。そして、手持ち資金が日々減少していくベンチャーに対する回答はもう少し早くするべきですし、断るとしても理由を明示するべきです。
このような事例の積み重ねの結果、一般論として、ベンチャー側は大企業に対し「意思決定が遅い、リスクを取らない」といった不満を持ち、大企業側はベンチャーに対し「ビジネススキル、説明力の不足」を感じる好ましくない循環となっています。
経済産業省が実施したアンケートでは、ベンチャーと大企業との連携のハードルとして次のような項目が挙げられています。
○ベンチャー経営陣と大企業の新事業担当者は意気投合するが、「社内文化・仕事の進め方の違い」や、ベンチャー企業の「与信・情報不足」により、意思決定者同士の討議に至らない
○大企業側で、ベンチャーとの連携の意思はあるが、技術や人材の面で有望なベンチャーの数が乏しいと感じる。ベンチャーの技術を活用する領域があいまいで、コンタクトしてもあいさつ止まりになってしまう
○ベンチャーの側で、契約スキーム(秘密保持契約、共同研究契約等)や契約の重要ポイントがわからない。連携の成果である知的財産の帰属やライセンス内容でベンチャー側と大企業側で合意ができない
○当初の技術仮説やビジネス仮説が十分に検証されずにプロジェクトが停滞してしまう。明確な撤退基準がなく、成功の見込みが薄くなった連携プロジェクトが継続されてしまう
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