経産省ベンチャー・大企業連携手引書の中身

連携を成功させるために必要なこと

<事業実施>
○当初立案した仮説が検証されないままに継続されてしまうことを回避することが重要。リーンスタートアップの手法で、技術やビジネスモデルの仮説検証を早期に行う仕組みを導入すべき(たとえば、GEではFastWorksとしてリーンスタートアップの手法を導入。3週間で試作品、2~3カ月で製品化を目指す)
○事業会社の連携部門が既存顧客に近い場合、既存製品の品質基準やブランドイメージとの衝突を回避することが必要。先行企業では、独立したジョイントベンチャーを設立することでこの衝突を回避し短期間でマーケットインすることに成功(たとえば、ソニーとベンチャーキャピタルのWiLは、スマートロックのジョイントベンチャーQrioを設立し、短期間に商業化を実現)
○一度開始した連携プロジェクトの成功の見込みが薄くなった場合、プロジェクトが不必要に引き延ばされてしまうことを避け、早期に次なるチャレンジに向かうことが重要。先行企業では、途中で連携の見直しを行えるようにするための条項を事前に契約に盛り込んでおくことで、痛手を最小化しながら早期に次なるチャレンジに向かえるように規定。結果として、当初想定した事業シナジーが発揮できなかった場合でも、結果や経緯をうやむやにせず、失敗からの学びを社内で共有するなど、次のチャレンジでの成功確率向上を図ることが重要。

オープンイノベーションの活動の継続に向けて

手引き策定の有識者勉強会には、人気小説『下町ロケット』(池井戸 潤・著)の中で、主人公の経営する中小企業の技術法務面での参謀として活躍する神谷弁護士のモデルになった方も委員として参加しています。内田・鮫島法律事務所の鮫島正洋氏で、知的財産、技術に関する戦略立案、契約交渉、紛争解決に活躍中です。同氏はベンチャーと大企業の連携の必要性と方法論について専門家の立場から次のように語ります。

「技術開発やマーケットの変化が加速する中で、イノベーションを持つ企業が独自に発展することはもはや難しくなっています。信用力やブランド力を持つ大企業との連携は必須です。また、大企業の側でも、ここ10年、うまくイノベーションを創出できていないという事実を認め、真のオープンイノベーションへの意識転換が進んでいます。今後は、イノベーションを作る側とキャッシュフロー、GDPを創出する側への分担が必要。ベンチャーと大企業の連携におけるギャップを埋めることは喫緊の課題です。法律の観点では、根本的な法律関係の特定、プロセスの管理、リスクヘッジなど基本的な論理をベンチャー、大企業の双方が理解していることが大事。そして、具体的な交渉は専門家の出番で、個別の状況に応じて、プロの力で最適な着地点を発見し、連携を成功に導くべきです。そのための支援をわれわれも徹底して実施します」(鮫島氏)

オープンイノベーションという概念が提唱され始めたのは2000年代の初めで、欧米企業は早い時期からそれを取り入れ、大企業がイノベーティブであり続けることは難しいという「イノベーションのジレンマ」を乗り越えてきました。ベンチャー企業も、大手との連携やM&Aによって、自らの事業で大きな社会インパクトを実現する道をひらいてきました。一方で、日本においては、大企業の技術力や成功体験がかえってあだとなり、オープンイノベーションが進んで来なかったのが現実です。また、人材の流動性の低さもその原因の1つとなっています。

しかし、ここにきて、日本の大企業でも、新事業開発部門、コーポレートベンチャーキャピタルの新規開設の増加や、アクセラレーションプログラムの実施など、オープンイノベーションへの機運が高まっています。また、ベンチャーの側でも、大学発ベンチャーを中心に研究開発型ベンチャーの成功例が出始めています。

オープンイノベーションへの環境が整いつつある今、この一連の動きが一時のブームに終わることなく、きちんと定着、継続するためには、ベンチャーと大企業の連携の成功例がますます増加することが必要です。今回発表された手引きが、できるだけたくさんの方々に読まれ、連携成功の一助となることを期待しています。

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