上記の心構えをベースに、手引きの中では、先進企業の事例などを基にベンチャー側、大企業側に以下のような提案をしています。
どのような連携戦略が必要か
<大企業側の連携戦略>
○自前主義に陥らずに社外連携を促進するために、定量的な目標・指標やインセンティブを設定する(たとえば、P&Gは、研究開発やイノベーションのアイデアの50%は社外から調達することを宣言、売上倍増を達成)
○事業会社の多くはベンチャーと事業や研究開発との領域が重複しており、外部リソース活用について社内からの抵抗を受けやすい。このため、全社の方針として、自社よりも外部が強みを持つ分野など連携領域を明確化、現場で実行できる段階まで詳細化する。連携の専門組織が社内で一貫した発信を実施する(たとえば、Philipsは、オープンイノベーションの実践領域を大分類ではなく、詳細レベルで具体的に設定。コマツは、Chief Technology Officer直下にCTO室をつくり自社の技術で不足する領域の連携を全社視点で推進)
○マッチング段階ではベンチャーの多くは、技術・人材面で事業会社の要求水準に達していないケースが多いので、外部の支援を得ながら高めていく。技術・人材のギャップを克服するため、ベンチャーを育成するアクセラレーションプログラムやベンチャーファンドを活用することも一案(たとえば、NIKEは、アクセラレーターのTechstarsを活用し、自社と連携する企業向けのアクセラレーションプログラムを実施。Crewwは大企業とベンチャーの連携プログラムを提案、リアルテックファンドは投資を通じてベンチャーと大企業との連携を推進)
<ベンチャー側の連携戦略>
○研究開発型ベンチャーは、中長期的な事業展開を見据えて連携すべき事業会社を選別することが重要。将来的な事業展開を阻害しないように、領域を切り分けて事業会社と連携するなどの戦略を構築(たとえば、Preferred Networksは、モビリティ、ビッグデータ、産業用ロボットなど分野に応じて連携する大企業を選択)
○研究開発型ベンチャーは、短期的な資金獲得だけでなく、中長期を見据え、事業会社との間で対等かつWin-Winの関係を構築することが重要(依存関係につながる資金の受け入れの回避や、自社に不利な条件に対してバランスを取るための条項を盛り込む交渉を実施)
<契約交渉>
○連携を具体化するためには、目的に合致した契約の締結が必要。契約書の作成と交渉には、条件規定書(タームシート)を活用して要点を先に合する方法などを活用する
○初期段階から社内外の専門家を活用することが重要。事業会社においては、ベンチャー企業との契約に慣れている法務担当者に相談することでスピードアップできることも
○専門家への相談窓口など公的支援制度等を把握し、活用することで、契約締結までの期間を短縮できる可能性あり
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