経産省ベンチャー・大企業連携手引書の中身 連携を成功させるために必要なこと

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このような課題を解決するため、経済産業省では、ヒアリング、アンケートなどの調査を実施し、有識者や実務家による勉強会を開催して、「事業会社と研究開発型ベンチャー企業の連携のための手引き」を策定、発表しています。

有識者勉強会座長の松田修一早稲田大学名誉教授は、次のように語ります。

「日本においてベンチャー企業の成功事例が少ない要因の1つに、大企業等の事業会社とベンチャー企業との連携が不足している実態があります。特に、リスクが高く、ビジネスが軌道に乗るまでに時間がかかる研究開発型ベンチャー企業と事業会社との連携は圧倒的に不足している状況です。この手引きは、両者間の連携の課題を明確にし、連携のステップごとに課題解決のベストプラクティスを提示しています。研究開発型ベンチャー企業と事業会社の双方の社外連携責任者が、連携プロジェクトを進めるうえでこの手引きを「共通言語」とすることで、ベストプラクティスが次々と生まれ日本発のイノベーションが加速することを願っています」

まず、心構えが大切

手引きは、事業会社とベンチャーの連携の現状を俯瞰(ふかん)し、連携においてぶつかりやすい壁を分類、それをを乗り越えるために、自己診断シートを整理し、参考となる先行事例を記載するという構成になっています。その中で、具体的な提言は、連携の「心構え」から始まります。

<大企業側の心構え>
○連携によって期待する成果を明確化する(共有できる目的を意識)
○一方的に相手に情報を要求せず、事業会社ならではの知見を積極的に提供する
○打ち合わせには可能なかぎり意思決定者が参加し、安易に「持ち帰り」にしない
○打ち合わせはいつも自社で開催するのではなく、積極的にベンチャー企業を訪問する(オフィスを訪問することでカルチャーを感じ取ることが相互理解に有効)
○1度連携先候補が実施したプレゼンテーションの内容は自社の関連部門で共有し、必要以上に同じ説明を繰り返させない
○仮に連携が実現しなくても明確に理由を伝え、両社が納得して話を終える、等
<ベンチャー側の心構え>
○自社の技術が、相手の事業や社会にとってどのようなインパクトをもたらすかを語ることができるようにする(共有できる目的を意識)
○事業会社の意思決定プロセスは多段階であり、企業としての決断までには時間がかかることを理解する(最初のコンタクトで、連携を具体化するまでの事業会社内の意思決定プロセスについて質問する)
○最初から1社に肩入れして技術やノウハウを出しすぎない(少なくともNDA締結までは複数の連携先のオプションを持っておく)
○信頼構築を第一に考えて行動する(相手の社名や情報はむやみに人に言わない、自社ができること/できないことは正直に伝える、服装や言葉遣いがラフすぎない)
○当初想定した事業進捗からどの程度乖離したらやめるか決めておく、等
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