「発達障害」の栗原類を潰さなかった"母の力" なぜ彼は社会で活躍できるようになったのか

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ゲームは朝だけと決めていました。朝起きてから学校に行くまでは好きなだけゲームをやっていい。その代わり夜はやらない。テレビ番組も観たいものはいくらでも録画していいし、朝は好きなだけ観ていい。だけど夜は9時には絶対寝ないとダメ。その条件であれば子どもにとって厳しすぎるということもなく、夜は必ず同じ時間に眠くなるようになります。そして同じ時間に早く起きるようになるので遅刻はしないで済むのです。

子どもと親は別の個性を持った人間だと理解する

『発達障害の僕が 輝ける場所を みつけられた理由』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

発達障害者は、物事へのこだわりが強かったり融通が利かなかったりしますが、誰にでもこだわりはあり、それが家族という単位のなかでは、しばしばストレスの根源になりえます。夫婦という単位でも、親子という単位でもそうですが、自分と違う人間は自分と違う部分にこだわり、自分がこだわる部分をどうでもいいと思っていたりします。そして自分がこだわる部分は大概、自分が簡単にできること、得意なこと、苦にならないことであり、自分にとってどうでもいいことは、自分が苦手なこと、興味のないこと、好きではないことだったりします。それが人によって違うからもめたりします。

発達障害だと診断された際、教育委員会での会議でこう言われたことを思い出します。

「あなたは小さいころ勉強もできて要領もよい、頭の回転も速くて、何でも他人より早くできる子、いわゆるできのいい子だといわれて育ってきたタイプでしょう。だけど発達障害というのは、一人ひとりの特性が違います。あなたの息子さんはあなたと同じタイプではないのはわかりますね? あなたは自分が子どもの頃、何の苦労もなくできたことが、どうして息子さんにはできないんだろうと理解できないかもしれない。不思議でしょうがないでしょうね。だけどそう思ったときは、子どもの頃に自分ができなかったことをたくさん思い浮かべてください。そして、自分ができなかったことで息子さんができていることを、ひとつでも多く見つけてあげてください。そうすれば『なんでこんなこともできないの?』という気持ちが静まり、子どもを褒めてあげられるようになります」

その言葉は、私にとって一生忘れることのできない大切な言葉となりました。「親子なのだから」「家族なのだから」という、個と個の境目をあいまいにするような感覚は、時として自分を甘やかし、相手に負担をかけます。「自分と子どもは別々の個性を持った人間であり、私にできないことを彼はたくさんやっている」と、つねに考えることで、子どもを尊重し、心から褒めてあげられるようになります。

もちろん、腹が立つこともたくさんありますし、けんかも説教も毎日のようにしています。しかし「私はコイツにはかなわない」と思える彼のいい部分をたくさん見つけています。類は人に対して嫉妬心を持たないから、うらやんだりひがんだりしません。だから、自分より上の人にも自然に構えることなく接することができます。もちろん後輩に対しても、誰と接するときにも対等で、ぞんざいにも卑屈にもなりません。また、つねに穏やかなのも見習いたいところだと思っています。

栗原 泉 翻訳家通訳・音楽ジャーナリスト

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くりはら いずみ / Izumi Kurihara

25歳で栗原類さんを出産し、子育てにふさわしい環境を求めて類さんが5歳の時にニューヨークへ移住。類さんが8歳のときにADD(注意欠陥障害)と診断され、自身もADHD(注意欠如・多動症)と診断される。類さんの小学1年での留年や、帰国後中学での不登校などさまざまな困難を乗り越え、類さんがモデル・俳優として活躍する現在まで親子で障害を乗り越えてきた。著書は『ブレない子育て』。

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