イオン甲子園店、稼ぎ時に「突如閉店」のナゾ 野球ファンが殺到する繁盛店なのに…

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業績不振ではないのに、稼ぎ時の野球シーズン中に閉鎖する――。このことに合理的な理由を見いだそうとすると、三菱地所から退去を求められたから、という答えにならざるを得ない。イオンとの賃貸契約がどうなっているかについては、イオン、三菱地所ともに「守秘義務があり公表できない」としている。

このため賃貸期間のほか、賃料設定が固定方式なのか、それとも売上に応じてスライドする方式なのか、あるいは、固定方式とスライド方式の併用なのかも定かではないが、通常、賃貸契約期間中に大家が店子に退去を求めるということは考えにくい。

従って、今年5月、もしくは6月、7月に契約期限が到来する契約になっている可能性が考えられるが、そうであっても、せめてシーズン終了まで短期間の期間延長を認める方法もあったはずだ。

また、建て替えではなく改装なので、1年以上の工期を必要とするとも考えにくい。シーズン終了までは賃料収入を得て、その間に計画を立て、シーズン終了とともに改装に着手しても損はないだろうに、なぜシーズン中のこのタイミングで閉店するのか。

甲子園球場では、タイガース戦が年間60日開催され、その都度1日平均4万人の観客が集まる。そして、イオン甲子園店は、まさに甲子園駅から球場へ向かう通り道にあるのだ。中には、必ず立ち寄るという人もいるだろう。閉店によって、今後はそれがどう変わるのだろうか。

付近に「ららぽーと甲子園」もあるが…

前述したように、球場の南東側には、三菱地所の永遠のライバルである三井不動産が展開するららぽーと甲子園がある。イオン甲子園店がなくなっても、こちらに行けば良いようにも思える。

ただ、ららぽーと甲子園のアクセスガイドを見ると、甲子園駅東口から徒歩5分とあるが、それは最も甲子園駅に近い出入り口までの所要時間。しかも、駅から球場の脇を通り過ぎた先にあり、食料品売り場があるイトーヨーカドーは駅から最も遠い南東の端に位置する。そのために、現在は観戦客にとっては「わざわざ行かなければならない」立地ではあるが、イオン甲子園店の閉店とともに客が流れる可能性はある。

それでも、イオン甲子園店の立地は、駅から甲子園球場に向かう道のすぐ右側にあり、観戦客にとっての利便性は、ららぽーと甲子園に比べて圧倒的に高い。どのような店舗が入るにせよ、改装終了後の再オープン後の店舗にとっても、甲子園球場に来る観客は主要顧客になるはずだ。

タイガースは5月23日から28日までの甲子園6連戦の後、5月30日から6月1日までの3日間、ロッテ戦をZOZOマリンスタジアムで戦い、6月2日には甲子園に戻ってくる。このままではタイガース不在の間に、ファン御用達の店があいさつもなく閉まっていたということになりかねない。

これまでこの店を支えてきた顧客は、将来もこの場所の店舗を支える顧客である。しかるべき説明が望まれることは言うまでもない。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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