イオン甲子園店、稼ぎ時に「突如閉店」のナゾ 野球ファンが殺到する繁盛店なのに…

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これだけの需要を吸収していた店が閉店すると、どうなるだろうか。観戦フードをここで買えなくなった人々が、球場内のショップに向かうとすると、現在の体制のままでは到底、客をさばききれるとは思えない。そうなればファンの不満が爆発する可能性もある。

甲子園球場を所有する球団親会社の阪神電鉄にとって、とてもではないが「ビジネスチャンスが増える」などと言っていられる状況ではないのだ。

乗用車で観戦に訪れる客にも影響は大きい。イオン甲子園店が入居するビルの4階から6階までと屋上はタイムズが運営する駐車場スペースになっており、最大収容台数は1000台。関係者によれば、ゲーム開催日でも満車になることはないが、それでも少ない日で300~400台、多い日だと600台の利用があるという。

駐車場からの人の出入り口は店内にしかなく、店舗を閉鎖すれば駐車場も閉鎖せざるを得ない。既に5月末日をもって「契約期間満了に伴い営業を終了」する告知を出しているが、近隣にこれだけの台数を収容できる駐車場はない。球場の南東側にある「ららぽーと甲子園」の駐車場は3000台の収容能力がある。だが、野球観戦客の駐車を禁じていて、発覚すれば、ららぽーとで買い物をしたかどうかにかかわらず、通常の駐車料金に加えて6000円のペナルティを課される。

閉店まで3週間を切ったというのに、イオン、三菱地所ともに、なぜか閉店が5月末であることを認めず、「正式な閉店時期は未定」としている。しかし、実は店内に入居する専門店にはすでに4月13日付の書面で、かなり具体的な指示が出されているのだ。

閉店で「甲子園駅」にも対応が必要か

在庫処分セールをするのであれば、第1弾は4月28日から30日の3日間、最終弾は5月26日から31日までの6日間。そして、顧客に対する閉店の告知は4月28日からとし、あくまで各店舗ごとの閉店や閉鎖・移転の案内という形を取る、つまり、対外的には、イオンが閉店になるから退去を求められているとは、言わない形を取るよう求めている。

また、什器・備品の搬出も6月1日から7日までの7日間を指定。搬出スケジュールは後日調査用紙を配り、調整したうえで4月30日までに確定、ゴミについても計画的な廃棄を求めている。

阪神電鉄甲子園駅はここ数年の改装で、乗客の収容規模を見違えるほど増強してきた。現在も観戦には電車の利用を呼びかけており、イオン甲子園店の閉店で駐車スペースを失う人には、引き続き、電車での利用が勧められることになるだろう。

電車で甲子園球場に訪れる人が増えるだろうから、誘導にあたる駅員の体制も見直しを進めているかと思いきや、阪神電鉄はイオン甲子園店の閉店に対して「どういう影響が出るのかわからないので、現時点では特に対策は立てていない。影響を見てから考える」とするにとどまる。

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