「最強爆弾」に手を出した米軍事政策の暴走 国防総省がやりたい放題やっている

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その危険性は、ジョージ・ブッシュ政権が2001年9月の同時多発テロに対してどんな対応を取ったかを見れば理解できるだろう。9.11のテロは独ハンブルクなどの都市部で計画され、準備された。そこは、米国の軍事力を「衝撃と脅威」をもって見せつける場所としては、ふさわしくなかった。そこで米軍による攻撃の対象に選ばれたのがイラクだ。サダム・フセインと9.11テロの間に関係はなかったが、そんなことは完全に無視された。

イラク戦争はISを生み出す決定的な要因となった。安全保障政策を政治的チェックの行き届かない政策担当者に任せたことは、本来はあってはならないことだったが、反省の色はない。

米国メディアにも責任がある

バラク・オバマ前大統領ですら、軍事手段が目的化するワナから逃れられなかった。ドローン攻撃をテロ対策に多用し、今回のMOAB投下に至る悪しき前例を作ってしまったからだ。

確かにドローンに頼る理由もあったが、単純にそうした兵器が存在したことが、オバマ政権をドローン使用に向かわせた。米国への直接的脅威がほとんどないような場所で、身柄確保ではなく、殺害を目的とする作戦にゴーサインを出したのだ。

MOABも同様だ。アフガニスタンの地下施設に潜伏する、さして重要でもないISの兵士を殺害するのに使われた。爆弾投下の目的が米国の軍事力を知らしめることにあったとすれば、いったい誰がそのメッセージを受け取ったのだろうか。

ひとつの答えは、米国メディアだ。爆撃に続いたのは、扇動的な報道だった。ケーブルニュースはトランプ大統領の暴言やうそを報じるのに夢中だ。新鮮さが失われれば、スキャンダルから国民の意識を遠ざけるため、トランプ大統領は次の手を打とうとするだろう。米軍も、その手助けをする気が満々のようだ。

それが北朝鮮であれ、ペルシャ湾岸であれ、米軍の次の攻撃が本物の緊急事態を引き起こさないよう祈るばかりだ。運悪くそうなってしまったら、軍や国防総省が聖域化してしまい、重要ポストが空席だらけのトランプ政権に、難局を乗り切る力はない。

スティーブン・ホームズ 米ニューヨーク大教授

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Stephen Holmes

ハーバード大、シカゴ大、プリンストン大の政治学部、法科大学院で教鞭を執った後、2000年より現職

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