ロンドンは本当に多様性に満ちた都市なのか

現地20人に聞いてわかったテロとの距離感

「慣れていないと、不安な気持ちを抱く人もいるかもしれません。たとえば電車に乗っていても、ムスリムがいると、わざわざ遠くの席に移動する人を見かけます」

Trinaさん(69)は、「遠い昔にニュージーランドから移住してきた」という白人女性。まず驚かされたのは、テロへの認識だった。

私たちはテロと共生していかなければならない

「ブリュッセルやパリでもテロは起きていたし、いつロンドンで起こってもおかしくない状況だったのよ。そういう意味で、私たちはテロと共生していかなければならないんじゃないかしら」

「テロと共生」という言葉は、平和ボケした日本人からするとショッキングな言葉だ。しかし、これが欧州の現実なのかもしれない。では、何十年も前にこの地へ移住してきた彼女の目に、「ロンドンの多様性」はどのように映っているのだろうか。

「多くの地域では、やはり『多様性がある』と言えると思う。でも、郊外のほうに行くと、移民に対しては否定的な考えを持つ人も少なくない現実がある」

69歳の白人女性。日常生活におけるムスリムとの接点はあるのだろうか。

「私自身、ムスリムの知り合いはいないけど、まわりにはムスリムの人々と仲良くやってる友人もいるんじゃないかしら」

ネパール系移民のSriyaさん(写真:筆者提供)

ネパール系移民のSriyaさん(21)は、テロ発生時に現場近くにいたため、その時は恐怖を感じたという。しかし、テロについての意見を問われると、いたって冷静だった。

「もちろん不安はあるけど、移動の際なども自分たちが巻き込まれないように注意して行動するしかないと思うんです」

また、Sriyaさんは、Trinaさんが指摘していた都市部と郊外での意識の差を裏付けるようなエピソードを語ってくれた。

「うーん……ロンドンの中心部は多様性があると思いますけど、地方のほうに行くとまだまだ白人文化で、私たちのような移民に対しても差別的な態度を取る人が少なくないんです。閉鎖的というか。そこは、今回のアメリカ大統領選の結果とも似ているのかな。だから、私は中心部で暮らすことを選んだんです」

中心部を離れ、ロンドン西部のNorth Ealingという地区に向かった。ここは白人ばかりが住む閑静な住宅街で、黒人やムスリムを見かけることはほとんどない。わずかにアジア系を見かけるくらいだ。ロンドンに住む友人に言わせると、東京でいうと三鷹にあたるような場所だという。

町の目抜き通りにある教会に通うPaulさん(60)とNigelさん(73)は、ともにこの土地で長年にわたって暮らす白人男性だ。この日の教会行事でも、参加者は全員が白人だった。

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