ロンドンは本当に多様性に満ちた都市なのか 現地20人に聞いてわかったテロとの距離感
最初に訪れたのは、バッキンガム宮殿周辺やロンドンブリッジ。東京でいえば、皇居周辺や日本橋といったところだろうか。まさに、ロンドン・オブ・ロンドンという場所だ。街角に立ち、過ぎ行く人々を眺める。白人や黒人だけでなく、中東系やアジア系など、本当にさまざまな人種によってこの都市が成り立っていることを実感する。
まずインタビューに答えてくれたのは、2人のかわいらしい息子を連れた白人男性。ロンドンで生まれ育ったというAndrewさん(54)。テロについて水を向けると、とても強気な答えが返ってきた。
「テロと言ったって、亡くなったのは1人だけだろう(実際には5人)。みんな大げさなんだよ。ちっとも怖くない。第二次世界大戦の頃は毎晩のように空爆があり、何千人も亡くなってるわけだから」
心の底からそう思っているのか、手をつなぐ息子たちに恐怖を与えないために虚勢を張っているのか、その表情からは読み取ることができなかった。次に、本題であるロンドンの多様性について質問した。ロンドン出身の白人として、この都市にさまざまな人種が暮らすことをどう思っているのか。
「外国人である」と意識することもない?
「ロンドンは、やはり多様性のある都市だと思うよ。移民の人々も、自分たちのことを『外国人である』と意識することもないんじゃないかな。それほど溶け込んでいる」
さらには、こんなエピソードも。
「実は、以前に韓国に行ったことがあるんだけど、彼らとの間にすごく壁を感じた。自分は外国人なんだと意識せざるをえない文化的な壁を感じたよ。この国では、外国人は『国の一部』にはなれないな、と。日本には行ったことないけど、同じ課題があるんじゃない?」
次に話を聞いたのは、パリッとしたスーツ姿がまぶしい黒人男性のJelleさん(22)。ガーナ系の移民だが、ロンドン南部で育ったという。
「私が育った地域はすごく荒れていて、暴力や殺人も日常的だったので、テロで数人が死んだと言っても特別には……。うちの町のそういう事件はニュースにならないわけだし」
先ほどのAndrewさんとは異なる理由ではあるが、テロの脅威についてはきっぱりと否定した。では、ロンドンに多様な人々が暮らすことについては、どう考えているのだろうか。
「ありがたいことに自分は多様な人種、多様な宗教を持つ人々が通う学校で育つことができたので、異なるバックグラウンドの人と友人として、人間としてかかわってきたつもりです。宗教というフィルターを通して人を見ることはありませんね」
「ただ……」とJelleさんは続けた。
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