ロンドンは本当に多様性に満ちた都市なのか 現地20人に聞いてわかったテロとの距離感

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73歳のNigelさんと、60歳のPaulさん(写真:筆者提供)

白いひげがダンディなPaulさんが口火を切ってくれた。

「このEalingは、特に多様性がある地域だと思うよ。というのも、第二次世界大戦を経て、ポーランドを中心に多くの東欧の人々がこの町に移り住んできたんだ。あと、日本人もわずかに住んでいる。彼らに対する差別なんて存在しないね」

ずっと福祉の仕事に携わってきたということで、私の電動車いすに対する興味を隠せないNigelさんが補足をしてくれた。

「まあ、ポーランド系移民は私たちと同じ白人だから、他の人種と比べて少し有利なのかもしれないね。ただ、同じ白人に見えても、いざ話をしてみると、その言語で違いがわかる。そういう意味では、いくら差別がないとはいえ、言語ができないと地域社会に溶け込むことは難しいかもしれないね。ほら、どうしても同じ言語の者同士が固まって、壁をつくってしまうから」

「有利(Advantage)」という言葉が気になったが、それでもNigelさんもPaulさんと同様、「人種的な差別はない」と言い切った。

驚くことに、なんとPaulさんは日本で働いていた経験があるという。当時は、四谷3丁目に住んでいたそうだ。

「でも、日本には多様性がないね。外国人として疎外感を覚えることが多くあった」

「I’m ガイジン。Haha……」

当時を振り返り、Paulさんは乾いた笑い声をあげた。

オリンピックを機に再開発された地域では

最後に向かったのは、ロンドン北東部にあるStratford。2012年に開催されたロンドンオリンピック・パラリンピックのメインスタジアムが建設されたことで再開発が行われたエリアだが、元々は黒人やムスリム、アジア系、ヒスパニック系などが多く住む移民地区。白人は非主流派だ。ロンドンに住む友人に「東京で言うと?」と尋ねると、「再開発されてからは豊洲のような位置づけだけど、開発前でいえば北千住かなあ」とのこと。

まずは、男性2人組に声をかけた。パキスタン移民のSyedさん(26)。テロについて意見を聞くと、穏やかな口調ながらも静かな怒りをにじませた。

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