ネット時代に活躍する、若手トップ棋士
新世代リーダー 渡辺 明 将棋棋士
研究をしなくても将棋を指すことはできる。が、そうなるとプロ間で流行する戦型から逃げる必要が出てきて、自分が指せる範囲が狭まってしまう。第一線で活躍するためには研究もやり続けなくてはならない。「羽生世代がいまだに一線で活躍しているのは、彼らもそういう環境の変化に対応できている表れと感じています」。
さらに将棋の「見せ方」も変わりつつある。将棋ファンが情報を得るのは従来、テレビ棋戦の視聴や新聞の将棋欄というのが一般的だった。が、近年はインターネットを通じて対局を観戦ができる。あるいはツイッターなどを通じ棋士とのコミュニケーションが図れる。
「私は10年前からブログをしていますが、この10年の間でファンとの交流も変わってきました。ニコニコ動画ではタイトル戦が朝から終局まで生放送されています。将棋ファンを取り込みやすい環境になりつつあります」
最近の若手棋士の中ではインターネット対戦で腕を磨いてプロになる人も出始めた。10年前までは将棋教室や道場に足を運ばなければ強くなれなかった。将棋人口の少ない地方は都市部と比べるとハンデもあった。ネット環境の充実でそういうハンデもなくなりつつある。「5年後、10年後に羽生世代のように強力なグループができる可能性も十分にあります」。
変わらない「棋風」
将棋には「棋風(きふう)」という概念がある。端的に言えば将棋を指すうえでの特徴や性格のこと。攻めが好きな人は「攻めの棋風」、受けが得意な人は「受けの棋風」などさまざまな表現がされる。
「私は手堅い棋風とよくいわれます――」。渡辺将棋の特徴はリスクを回避して、危ない手は指さず確実な手を積み重ねていく。それも善し悪しと語る渡辺氏だが、結果的に竜王のタイトルを保持し続けていることから、その棋風が渡辺将棋の強さの根幹にあるといえる。
先ほどコンピュータやネット環境の充実が将棋に与えた変化について触れたが、このような環境の変化によっては、棋風は大きく変わらないと渡辺氏はいう。「私自身、プロになって15年になりますが、棋風は変わっていない。人間の性格が急に変わることがないように、今後も大きく棋風が変わることはないと思います」。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら