ネット時代に活躍する、若手トップ棋士
新世代リーダー 渡辺 明 将棋棋士

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一方、棋風は変わらなくとも、戦法を変えるということはあるそうだ。たとえば将棋には居飛車と振り飛車という2つに戦型が分類される。渡辺氏は居飛車党で振り飛車はめったに指すことはないが、今後、振り飛車を指す可能性はゼロではないという。

「居飛車党が振り飛車を指すのはプロ的にはちょっとした変化です。私自身が1年を通じて振り飛車を指すとなれば、大きな変化でしょう。そこまではいかなくても、たまに振り飛車を混ぜるという可能性はあるかもしれません。ただあくまで戦法選択の話で大元の棋風はそう変わらないでしょう」

今後の目標、そして引き際

現在は竜王に加え、「棋王」と「王将」の3タイトルを保持する渡辺氏だが、将棋界には全部で7つのタイトルが存在する。残る「名人」を森内氏、「王位」「王座」「棋聖」を羽生氏が保持している。かつて羽生氏はこのタイトル7冠を独占したことがある。前人未到の快挙だった。「私自身、7冠をとってやろうと考えてはいないです。今はある程度研究が進み競争の時代なので簡単ではないでしょう。なんといっても羽生さんがいるからね(笑)」。

そして棋士としての引き際。すなわち「引退」について渡辺氏はこう語る。「やることをやっているけど、結果が出ななったときでしょう。そういうときはあきらめがつきやすい。今のような研究などを続けても、年齢とともに成績が落ちれば辞める時期にきているということです」

かつて羽生氏にあこがれた渡辺少年のように、渡辺竜王にあこがれるネット世代の少年たちがこれから棋士を目指す時代になりつつある。新たな世代の壁となり、羽生世代に立ち向かう渡辺氏の挑戦はこれからも続いていく。

(撮影:尾形 文繁)

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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