なぜ、「彼なら結婚できる」と思ったのか。それは、彼が自分のコンプレックスをすべて受け入れていたからだ。受け入れていたうえで卑屈になることなく、時にはそれを笑いに変えてひたすら前に進むマインドを持っていた。そして、結婚するためには何をしたらいいのか。その都度その都度考えて、行動を起こしていた。
たとえば、こんなエピソードがある。入会して間もなくのこと、康司からメールが来た。「鎌田さんの事務所の近くに背が高くなる靴の専門店があるんですけど、お時間のあるときに一緒に行って靴を選んでもらえませんか?」。
背の高くなる靴とは、通称“シークレットシューズ”のことだ。外側からは見えないが靴底のかかと部分が高くなっており、これを履くことで身長が何センチか水増しできる。
翌週事務所で待ち合わせて、その靴屋に2人で出向いた。日本橋にあるその店は、たまにテレビでも紹介される有名店だという。私は興味津々で店主に尋ねた。
「最高で何センチくらい高くなるんですか? 15センチくらい高くなります?」
「お客さん、15センチは無理ですよ。そこまで上げたら歩く時につんのめっちゃう。せいぜい10センチかな。そこに3センチの敷板を入れれば13センチは高くなりますよ」
康司はその日、10センチ増しの厚底シューズ2足と3センチ水増しできるプラスチックの敷板を買った。そして、その後のお見合いやデートには、この日買ったシークレットシューズを履いていった。
この靴には、こんな後日談がある。お見合いをし、交際に入った女性とデートに行ったときのこと。“おいしい”と評判の焼き肉店に入ったら、テーブル席がいっぱいで座敷席に通されてしまった。康司はそのときのことを、おかしそうにこう話してくれた。
「うわっ、やべっ、靴脱ぐのか、と思っちゃって。一気に背が低くなったのがバレないように、『あ、どんどん行ってください』って、彼女と僕の靴を下駄箱にしまいながら時間稼ぎして、案内してくれる店員さんと彼女の後ろについて席まで行きましたよ。帰りも『僕が会計していくから、先に靴を履いて外で待っていてください』って、靴箱の鍵を彼女に渡しました」
その話を聞いて光景を思い浮かべ、私も大笑いしてしまった。
「次も会いたい」と思われない男性の会話
一方、どんなに容姿や経歴がよくても、年収があっても、口を開けばマイナスなことを言う人はお見合いをしてもうまくいかないことが多い。
「一応上場企業に勤めてますけど、僕は出世しませんよ」
「上司が最悪なんです。転職したいんですけど給料が下がるのが嫌なんで我慢してるんですよ」
「ホテルのコーヒーが1500円って、高いですよね。なんでこんなに高いのか。特別おいしいわけではないのに」
「お見合いはこれまでどのくらい活動してきたんですか? 僕は3年やってますけど、さっぱり結果が出ませんね」
「貯金なら4000万円ありますよ。だって将来年金がどうなるかわからないじゃないですか。資産もあります。僕といれば老後は心配ありませんよ」
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