ポルシェが秘める「911至上主義」からの脱却 ケイマン GT4 クラブスポーツに忖度はない
クラブスポーツもクラブスポーツMRも、ジャングルジムの如きロールケージなど様々な安全装備を装着したうえで、なおかつ大幅に軽量化したボディに、溝なしスリックタイヤを履いた本格的なレーシング・モデルだった。万が一にもクラッシュなど許されない貴重な試乗車ゆえ、まずはプロのレーシング・ドライバーが駆る先導車に続いての、量販型GT4での完熟走行からプログラムはスタートした。
ちなみに、このまま公道へと乗り出せるノーマルのGT4でも、本格的なサーキット走行を難なくこなせるポテンシャルの持ち主であることは、すでに確認済みだ。ちなみに、こうした忙しいシーンでは、ヒール&トーの操作を肩代わりしてくれるダウンシフト時のブレッピング機能が、単なるアクセサリーなどではなく、徹底的に機能的な“実用装備”であることを、改めて教えられることになった。
轟音に包まれるキャビン
そんな肩慣らしの後、メインメニューであるクラブスポーツとクラブスポーツMRへの試乗となった。まずは後者からのテストドライブ。
クルマのスタイリングは基本的に量販型に準じるものの、専用サスペンションの採用でさらにローダウンしたボディに、フェンダーからはみ出さんばかりのスリックタイヤを組み合わせ、派手なカラーリングをまとったその姿は、やはり純粋なレーシング・モデルならではの迫力を見せる。
ドアハンドルに手を掛けると、驚いたのはまるで蝶の羽が舞うがごときの軽さであったことだ。フロントフードをカーボンファイバー化するというのは軽量化の定番だが、このモデルではその素材をドアにも使っている。くわえて、ウインドシールドとともにサイドのドアウインドウも、ガラスからポリカーボネート樹脂製に変更しているのである。
こうした“軽さ”へのこだわりは、キャビン……というよりは、まさに仕事場という感じに仕上がったインテリアにも徹底していた。防音遮音材はもちろんなく、戦うために必要のないパッセンジャー・シートも取り外し済みだ。ダッシュボードの上半分にこそオリジナル・ケイマンのパーツを採用し、一応“らしさ”を保っているが、下半分は化粧用のパネル等いっさいが取り外されて内部構造が剥き出しになっている。スパルタン、の一語に尽きる。