子牛の価格が高騰し、2012~2016年で2倍になったことは「『尾崎牛』のグローバル化が映す和牛の危機」(3月22日配信)で解説しました。その移行期には、「よろにく」(東京都港区)のような希少部位ごとに食べ方を変えて提供する高級店が流行しています。また、塊肉の解体ショーなど、熟成肉を軸とし、焼き肉を1つのエンターテインメント領域まで引き上げたのは格之進グループです。
2015~2016年頃には、「東京で『セルフ焼き肉』が密かに流行する理由」(2016年10月21日配信)でも取り上げたように肉焼き以外の飲料、ご飯までセルフの焼き肉店「肉と日本酒」(台東区)「ヒロミヤ」(新宿区)や立ち喰い焼肉「六花界」(千代田区)、「治郎丸」(新宿区他)等、子牛の価格高騰に対応すべく、肉質を下げずに手頃な価格で肉を提供するセルフや立ち食いスタイルの焼き肉店も登場して人気になり、定着しました。最近では、「29ON」のように、牛肉のさまざまな部位を最新の低温調理器を使用して料理し提供する、所謂、肉を焼かない焼き肉店もすでに流行の兆しです。
和牛としては高騰する黒毛和種以外に、褐毛和種、日本短角種、無角和種3種類存在します。いずれにしても生産数量が多くありません。和牛の中では黒毛和種が90%以上を占めますので、他の3種は、数量から、ムーブメントの一角を狙う存在にはなり得ないと思います。
黒毛和種はここまでのレベルになると、ワインと同じように誰が育てたのか(肥育したのか)が重要になってくるはずです。焼き肉店の業態がどんどん細分化されてきています。さらに細分化されたときにポイントになるのが、和牛の個性になってきます。神戸ビーフや松阪牛のブランド牛の中でも誰が、肥育した牛なのか? つまり、尾崎牛(宮崎)や田村牛(兵庫)のように「どこの誰が肥育した牛なのか」特定の肥育農家がつくる牛が高付加価値になってきます。
では、今後は何の肉が流行するのか?
ここ数年の牛肉輸入実績を見ると、豪州産牛肉のシェアが高く、増加傾向にあります。「『食べ続けると痩せる肉』の知られざる正体」(1月18日配信)でも書きましたが、やはりグラスフェッドビーフがムーブメントの一角に入り込むと考えられます。理由は現段階での輸入量の拡大傾向と、2015年に締結された日豪EPA締結による段階的な関税アドバンテージに起因します。
最近の日本の牛肉を取り巻く状況を振り返ると、2015年までに牛肉輸入量は拡大傾向で、そのうち、半数以上が、豪州産輸入牛肉です。豪州産牛肉は日本に輸出する際はグレインフェッドビーフも飼育していますが、6割程度はグラスフェッドビーフです。日本市場における、豪州産牛肉は、2015年から始まった日豪EPAによる段階的な関税削減というアドバンテージをもっており、競争力の面で豪州産牛肉のポジションが非常に優位になってきます。
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