「出稼ぎ日本人」も無縁じゃない豪州のひずみ 増税をめぐる混乱の陰でグレーな雇用が横行
現地の日本人に取材を進めていると、「キャッシュジョブ」をしているという若者に結構出会った。日本食レストランや中華料理店ではこの雇用形態を取っているケースが少なくないとされる。
しかも、「キャッシュジョブ」では記録に残らないため税が天引きされないケースがあり、最低賃金以下の給料しか支給されなくとも、結果的には「ローカルジョブ」とさほど変わらない給料をもらうことが、場合によっては可能だといわれている。そのため、ワーホリ税の増税が可決されようが、そもそも税金とは関係のないグレーな雇用形態の下で働いているため、「ぶっちゃけ関係ありません」ということなのだ。
ヨーロッパからの若者にも蔓延
税を払わないアンダーグラウンドな雇用形態が蔓延しているのは、アジア系のワーホリ滞在者周辺ばかりではなかった。西海岸近郊にあるワイナリーが密集する人気エリアで、ワイナリー経営をしていたオーストラリア人経営者は、自らが醸造した琥珀色の赤ワインをグラスに注ぎながらこう明かした。
「ブドウの収穫時期になるとこのあたりの農家は、主にヨーロッパから来たワーホリの若者を大勢雇うのだが、キャッシュジョブは少なくないのが実情さ。だって楽だろう、納税を気にせず現金で渡したほうが。それに、もし税を気に掛けていたら大量の書類を書かねばならないし、とても面倒なんだよ」
すでに、ひそかに蔓延しているキャッシュジョブが、ワーホリ増税を機にさらに増加する可能性も指摘され始めている。今回、取材したワーホリ滞在の裏側にあるこのグレーな実態があるかぎり、税負担を増やしたところでどれほどの効果があるのかは、疑問を抱かざるをえない。
ワーホリ制度が掲げる本来の目的が建前とならないよう、多文化主義を掲げるオーストラリアでたくさんの出会いと価値観に触れ「出稼ぎ目的」ではない、プライスレスの経験を得る若者が減らないことを願う。
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