「出稼ぎ日本人」も無縁じゃない豪州のひずみ 増税をめぐる混乱の陰でグレーな雇用が横行
ワーホリ税の増税は、オーストラリアのワーホリ滞在者がカナダやニュージーランドなどに流れてしまう懸念を生じさせた。これが関係者からの猛抗議につながったワケだ。オーストラリアのメディアも、ワーホリの若者たちが減った場合、「ブドウ畑ではブドウが腐り、ニンジンは収穫されないまま放置され、果物や野菜は箱詰めされることなく、市場に卸されることはないだろう」などと、増税による国内産業への打撃を悲観的に報じた。
その後、議会で迷走を続けたワーホリ税をめぐる議論は昨年暮れ、最終的に税率は当初の32.5%から15%に落ち着いた。
だが、15%の増税が施行されて以降、すでにオーストラリアを渡航先に選択するワーホリ希望の若者たちの数は減り始めていると、オーストラリア各紙は次々に報じている。そもそも、オーストラリア政府がワーホリ税の増税に踏み切ったのは財政再建とともに、若年層の失業者保護などの狙いもあったのだが、関係者からの反対で、ワーホリ滞在者に頼ったいびつな産業構造が浮き彫りになる事態となった。
さらに、政府の思惑とは別に、新たな問題が浮かび上がってきている。
グレーな”キャッシュジョブ”の実態
日本人の出稼ぎワーホリについて取材を続けたところ、総菜などを売るデリで働くB子さん(20代前半)と知り合った。B子さんは意外な言葉を口にした。「私は途中から違法な働き方に切り替えました。だからワーホリ税が高くなろうが関係ないんです。そもそも、給料は課税されないように現金手渡しでもらっていたので」。
B子さんが口にした違法な働き方とは、課税を避けて記録が残らないよう、給料が現金手渡しで支給される雇用形態を指す。ワーホリの若者たちの間では「キャッシュジョブ(またはキャッシュ・ハンド・ジョブ)」と呼ばれており、テーブルの下で現金をこっそりやり取りするという揶揄から、通称「アンダー・ザ・テーブル」ともいうそうだ。正式な申告をせずに雇用関係を結び、給料が最低賃金を満たさないケースも少なくないという。
反対に、最低賃金を守り、正式な雇用契約の下で年金などもきちんと保証される仕事は「ローカルジョブ」と呼ばれ、オーストラリア人の正規の雇用主に雇われるケースが多い。しかし、その場合はネーティブとほぼ変わらないレベルの英語力が求められることもあり、日本人を含むアジア系のワーホリの若者たちはグレーな「キャッシュジョブ」に就くケースが非常に多いという。
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