多すぎる医薬品営業マン 数年内に大リストラへ <シリーズ・くすりの七不思議>

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医薬情報担当者と訳されるMR(メディカル・リプレゼンタティブ)。医薬品の情報を医師に正しく提供することを使命とするが、要は製薬企業の営業マン。自社製品を医師に処方してもらおうと日々医療機関を回っている。

ここ数年、抗ガン剤や関節リウマチなど使い方が難しい新薬が増えたこともあり、医師への説明も技術が必要となってきた。そこで製薬企業は疾患領域や製品に特化した専門MRを配置している。

MR密度が最も高い日本 病院数の多さも一因

とはいえ、このようなスマートな業務ばかりではなく、夜の付き合いをはじめ接待は多く、いわゆる「ドブ板営業」的な仕事も根強く残る。製薬企業主催の勉強会後の“飲み会”、地方で勉強会を開き、旅行を兼ねて医師を呼ぶといった手法はいまだに横行している。

MRという職業は、ほとんどの先進国で資格、認定制度化されている。先進5カ国でMRの絶対数が最も多いのが米国で、日本が第2位。ただ、人口比で見ると日本は欧米諸国を上回る(下図)。日本はMR密度が最も高い国といえよう。

日本のMR数が相対的に多い理由は二つある。一つは病院数の違いだ。米国では5800病院あるが、日本は国土面積で25分の1しかないのに9000病院と乱立。MRが訪問しなければならない病院数が絶対的に多いということだ。

もう一つは製薬企業の再編が起因している。最大手の米ファイザーが2000年代初頭に買収を活発化。膨らんだMRを武器に、営業攻勢を強めた。触発されたライバルもMRを増やした。この流れが遅れて日本にも波及。外資系製薬企業のMR増員に合わせて国内大手も拡充した。

しかし、MRを取り巻く環境は厳しい。ファイザーが主力製品の副作用問題と特許切れで利益が激減、05年からMRのリストラを断行した。米国では大型新薬の特許切れが相次ぎ、ジェネリック医薬品(後発品)にシェアを奪われる一方、それに代わる新薬が出てこなかった。他社もコスト面からMR数の削減に踏み切った。その結果、03年に12万4000人いた米国のMRは9万2000人へ3割近くも減少してしまった。

日本の場合、新薬の特許が切れても後発品へのシフトは緩やか。MR数は米国のように減少していない。だが、今後数年のうちに糖尿病や高血圧など生活習慣病薬の大型製品が特許切れを迎える。武田薬品工業のアクトスやファイザー(アステラス製薬)のリピトール、ノバルティスのディオバンなどだ。この領域は、政府挙げての後発品使用促進による薬剤費削減のターゲットとなっている。担当MRは、特許が切れ、後発品が参入すれば、過剰人員になることが必至だ。日本のMRのリストラはこれから本番を迎える。

ただ、抗ガン剤などの専門MRは、需要が高い。米国でも専門MRは尊重されている。MRの明暗を分けるのは、自社に新薬があるか、そしてMR自身、専門性を持てるかである。

(週刊東洋経済)

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