「大磯町」は神奈川観光の第4の核になれるか 旧吉田茂邸の一般公開開始
加えて食事の場所の問題もある。旧吉田茂邸公開に合わせ、大磯プリンスホテルでは、吉田茂が好んだという大磯の名物が味わえる限定ランチを提供するが、これは5日前までに予約が必要で、料金は1人前3500円(税込、別途サービス料)と、ランチとしては少々割高な印象だ。
近隣の食事処といえば、あとはチェーン店のラーメン屋や小規模な食事処しかなく、“昼食難民“が発生する可能性もある。
一般公開開始直後は物珍しさもあり、一度は訪れるお客さんは多いと思うが、現時点の条件でリピーターを獲得するなら、展示などにそうとうな知恵を絞るとともに、駐車場が確保できないのであれば、駅からシャトルバスを運行するなど、アクセス方法の整備も考えなければなるまい。
大磯全体で考えるならば、観光地として成功するためには、旧吉田茂邸のみならず複数のスポットを周遊し、ある程度の時間を町に滞在してもらうことが必要になるだろうが、その意味では、大磯には大きなポテンシャルがあると言える。
大磯には日本の“海水浴場発祥の地“とされる海岸や、眺望のよい湘南平へ登るハイキングコースなど、海と山の豊かな自然がある。また、伊藤博文の別荘「滄浪閣(そうろうかく)」をはじめ、大隈重信や陸奥宗光、西園寺公望、安田財閥の始祖・安田善次郎など、歴史の教科書に名前が登場するそうそうたる人物たちの別荘跡が多数あり、そのうちのいくつかの歴史的建築が今なお保存されているのだ。
ただし、現在、その別荘の多くは個人ないし法人の所有となっている。町観光協会のイベントなどで時折、所有者の好意で公開されることがあるくらいで、通常、拝観は許されていない。ポテンシャルが大きい反面、常時公開されている観光施設の少ない現状の改善は、今後の大きな課題となるだろう。
リピーターとして再訪してもらえるかがカギ
また、大磯で特筆すべきものとして、毎月第3日曜日に開催される「大磯市」という港での市場イベントがある。神奈川県下最大の市場イベントとされ、最近は平均5000人以上が訪れ、イベント当日は港の駐車場はパンク状態となるほどのにぎわいを見せる。
大磯市のような集客力のあるイベントに訪れた人々に、町を周遊し町の雰囲気を味わってもらい、イベント以外のときにもリピーターとして再訪してもらえる施策が立てられるかが観光成功の大きなカギだが、これは大磯に限った話ではない。
さらに、もうひとつ大磯の面白い取り組みを挙げるならば、町観光協会が開発した「大磯今昔写真」というアプリにも注目したい。
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