「大磯町」は神奈川観光の第4の核になれるか 旧吉田茂邸の一般公開開始
もちろん、焼失時の建物を100%忠実に再現したというわけではなく、再現されたのは応接棟、玄関、食堂、新館のみで、庭園側から見てそれらの建物の裏側に焼失時も残っていた、大正時代に建てられた棟は再現されていない。
また、休憩コーナーや事務室などを含む管理棟が付随して建てられ、バリアフリー化やエレベーターを設置したほか、地階に存在したワインセラーも再現せず研修室とした。
建物内部のインテリアなどに関しても、焼失時、室内にあった多くのものも同時に失われてしまい、再現されていないものも多い。
焼失前の写真を見ると、ローズルーム(食堂)には、蒋介石から贈られたびょうぶが立てられていたが、これは再現されていない。また、床にはペルシャじゅうたんが敷かれていたが、これも予算がかかりすぎるということで、床の上にテーブルとイスが直接置かれた状態になっている。
また、応接室(楓の間)の家具も、テーブルやイスなどを中心に再現されているが、焼失時にはあったという執務机などは再現されず、賓客を迎えるための新館の「金の間」に関してはまったく家具が置かれず、全体的に、がらんとした印象を受ける。
とはいえ、吉田茂という人物が、どのような場所でどのような生活を送っていたのかということに想像を巡らせながら、その「空間を味わう」という意味においては、十分な再現レベルと言えよう。
旧吉田邸公開にあたっての課題
旧吉田茂邸の公開にあたっての課題も多い。まず、入館料が大人500円という金額に関しては、館内の案内がつかないことなどを考えると、他地域の、たとえば鎌倉の主要寺院の拝観料が200~300円であることと比べ、割高な印象がぬぐえない。
駐車場の収容不足も大きな課題だ。現在、旧吉田茂邸に付随する県立大磯城山公園旧吉田茂邸地区の駐車場は、普通車23台、身障者用1台、中型車以上2台の計26台分しかなく、近隣の大磯城山公園旧三井別邸地区にも第1・第2駐車場あわせて、普通車・身障者スペース合計で55台分しか駐車スペースがない。
今後、駐車場に入れない車が道路にあふれ、渋滞を引き起こす可能性もあると思う。
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