そうは言っても、この「プライド」という厄介なシロモノを捨てるのは、そう簡単なことではなかったという。
「たぶん、私は、出世欲もすごくあるほうでした(笑)。本来、私が行く予定だった海外出張に、妊娠が発覚して男性の後輩に行ってもらうことになったときは、悔しくて仕方がなかったくらいです。育休中に、同期の男性陣がどんどん出世していくのも、『子どもがいちばん』と割り切ったつもりなのに、なかなか割り切れない自分がいたりしました」
時短勤務のため、会議を途中で抜けざるをえないこともあったし、息子さんが高熱を出したと、仕事中、保育園に迎えに行かなくてはいけないこともあった。
そんなときは、「これじゃあ、人の上に立つ資格もない。周りに迷惑をかけるだけだ」と意気消沈したそうだ。だが、岩瀬さんは、「仕事への取り組み方」を変えることで、その危機を乗り切った。
「上に立つ立場になれなくなってもいいじゃないと、出世欲も捨てることにしました(笑)。ただ、成果には、こだわろうと。この開発だけは、何が何でも成功させようと心に決めました」
つまり、出世だ何だという「欲」を捨てて、事業という「コト」に集中したことが、アソボ~ノ!の成功や、仕事と育児の両立という難題解決につながったというわけだ。
筆者は、その言葉を聞いて、DeNAの創業者、南場智子氏が言っていた言葉を思い出した。曰く、
さらに、仕事とは「コト」に意識を集中することで思わぬ成果が得られるのだ、と。
何だか、岩瀬さんの言葉に重なる。
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