栃木「いちご王国」のルーツを知っていますか 「いちごの里」の色褪せない情熱
一方、いちごが最も美味しくなる一般的な“旬”の時期は、1〜3月頃までと長く続く。収穫作業は朝10時前の気温の低い時間におこない、さらに予冷庫(出荷前のいちごを冷やしておく冷蔵庫)で約半日冷却する。
「いちごは他の果物のような皮に守られていないので、運搬で傷めないために冷やして実を引き締める工程が必要です。店頭に並ぶ時に、完全に赤くなるような頃合いを見計らって収穫しています」と、菊地さんは教えてくれた。
「いちごの里」の誇りをかけて
菊地さんのハウスでは、とちおとめのほか、2014年に発表された栃木のいちごの新品種「スカイベリー」の栽培も始めている。繁茂力が旺盛で育てやすいうえ、大きさ、美しさ、美味しさが揃ったスカイベリーは、お歳暮や新年の贈答用のゴージャスないちごとして首都圏で人気となっているそうだ。
栃木のいちご栽培の先駆けだった足利市だが、現在は高齢化や後継者不足など、いちご農家をとりまく環境は厳しい状況にある。しかし、菊地さんは「足利がいちご栽培の基礎を築いたからこそ、いまの『いちご王国とちぎ』がある。その誇りをつないでいきたい」と語る。
こうした足利のいちごは、地元でも支持され、愛されている。
足利市田中町に店を構える和菓子屋「お菓子の伊勢」では、足利産のとちおとめをまるごとこしあんで包んだ「いちご大福」を冬期限定で販売している。
自ら市場に出向き、競りが始まる前に大粒のとちおとめを“先取り”して買うほど、素材のもつシンプルな美味しさにこだわっている店主の小暮さんは、「店自慢の自家製あんこと、とちおとめの甘酸っぱさのコントラストが絶品だと評判です。1〜3月の寒い時期が一番美味しいですよ」と語る。
栃木県のいちご栽培に大きな役割を果たしてきた足利市。「美味しいいちごを届けたい」という想いは、いまもなお色褪せずこの地に息づいている。そんな「いちごの里」の人々の情熱が結実したいちごを、ぜひ味わってみてほしい。
(Writer : HISAYO IWABUCHI / Photographer : SATOSHI TACHIBANA)
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