栃木「いちご王国」のルーツを知っていますか 「いちごの里」の色褪せない情熱

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「この栽培方法は、高設栽培といいます。以前は藁で編んだ菰(こも)を被せ、真冬の霜から守らねばなりませんでしたが、いまはその手間もかかりません」と菊地さん。

高設栽培は地面から隔離することにより土壌病害の抑制にもなると同時に、腰を屈めて作業する必要がなく、収穫も格段に楽になったという。

また、菊地さんは、いちごを糖度計で定期的にチェックしながら、肥料の成分や濃度をコンピュータでコントロールしている。このハウスでは一つの株からだいたい5〜6回の実を収穫するが、時期による甘さのばらつきが出ないように最適な養分を与えているのだ。

こうした先端の栽培技術を導入している菊地さんだが、美味しいいちごの要因はそれだけでなないという。

「いちごに生産革命が起きたのは、みつばちのおかげなんです」。

40年ほど前のいちごの受粉は、ハウスに自然風を入れておこなっていた。しかし、風の力に頼った受粉方法は、まんべんなく受粉することができず、いちごの形が悪くなり、歩留まりが悪かったという。偶然、養蜂場の近くにある農家のいちごが形良く育っていることに気づき、ハウスにみつばちの巣箱を入れてみたところ、見事に受粉率が高まり、立派ないちごが実るようになったとのことだ。

「みつばちたちは実によく働いてくれます。みつばちのためにも消毒薬などはなるべく使わず、天敵で害虫対策をとることが現在の常識になっています」

さらに菊地さんは、栃木の高設栽培では土の代わりに栃木県産の杉の樹皮を加工したものを使用していると教えてくれた。かつては処分に困った廃棄物であった杉の樹皮が、軽くていちごが根を伸ばしやすい“オアシス”として活用され、栃木の環境保全にも役立っている。

こうした様々な栽培技術の進歩や工夫によって、11月初旬から5月までの長い期間、品質の安定したいちごを供給できるようになり、農家の収入の安定と、地域の雇用にもつながっていると菊地さんは話す。

いちごには“二つの旬”がある

栃木のいちごの“旬”は、現在二つ山がある。一つは需要の“旬”、もう一つは味覚の“旬”だ。

需要のピークは12月。クリスマスケーキの準備に形の整ったいちごが大量に必要となるためだ。いちごは秋から冬の短日低温化の刺激を感じることにより花芽をつけるので、8月頃には苗を10℃の保冷庫に入れて花芽をつけさせ、出荷時期をできるかぎり早めて需要に応えている。

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