サバだけで勝負!「鯖や」は何がスゴイのか 預貯金1.5万円から年商約10億円へ復活

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売りたいという情熱と商品のわかりやすさ。右田社長は、まさに営業の基本を実践していると思いました。そしてこの出店を機に業績も右肩上がり。グループ計で年商も約10億円となり、従業員もパート含みで240人に拡大しています。

鯖やの「会社概要」を見ると、株主にJR西日本が入っているので意外な感がありました。昨年2月、JR西日本を引受先とする第三者割当増資を実施しています。その引き受けの背景には、やはり、右田社長のサバに対する熱い思いがありました。お刺し身でも食べられる養殖のサバを育てたい、それがかねてからの右田社長の願いでした。

その思いにJR西日本が賛同。2015年に協働で鳥取県でのサバの養殖事業に着手しています。寄生虫が生息しない地下水を吸い上げ、サバの陸上養殖をするプロジェクトです。手塩にかけて育てたサバなので「お嬢サバ」と名付け、すでに「鯖や」の一部店舗で期間限定の販売を開始しています。

「クラウド漁業で町興し」の夢

右田社長は、こうしたサバの養殖事業をさらに大規模に発展させようと考えました。かつて「鯖街道」の起点として名を馳せ、ピーク時には3500トン以上の水揚げを誇った福井県小浜市との共同事業です。気候の変化と乱獲により、近年は1トンを切るまでになった小浜サバを復活させようという「鯖、復活プロジェクト」です。

小浜での養殖(会社提供)

地元小浜で漁師が定置網で獲った小さなサバを、小浜市の全面的バックアップのもと、養殖事業者が高値で買い取り、地下水の湧き出る小浜湾で養殖します。このサバに、福井のコメを使った酒粕の餌を食べさせて「鯖街道よっぱらいサバ」と命名。そのよっぱらいサバを、右田社長の「SABAR」が安定的に買い付ける、というスキームです。

そして、小浜の養殖サバを4年間継続的に仕入れる費用と、その販路であるアンテナ料理店「SABAR鯖街道」4店舗の新築・改修費用を、新たなクラウドファンディングで調達することにしました。目標額は合計で1億1380万円。“イイサバ”の語呂合わせに右田社長のこだわりを見る思いです。店というハコだけでなく、漁業者、養殖業者など現場で働く人の所得を確保し、水産業で地方創生する、という狙いを持った新しい形のクラウドファンディングです。右田社長の夢である「クラウド漁業で町興し」プロジェクトが始動したのです。

夢といえば、先ほどの「ラジオ番組」の最後に、右田社長の夢をお聞きしました。「ありがたいことに店舗が増えていますが、これを38店舗にしたいんです。海外もシンガポールに出店していますが、そこから38カ国に進出したいですね」。

徹底的に38(サバ)にこだわるのが、なにわ商人・右田社長らしいユーモアです。ビジネス成功の秘訣は、先に述べた「情熱とわかりやすさ」のほか、この明るい「ユーモア」も欠かせないなぁ、と思いました。

竹原 信夫 日本一明るい経済新聞 編集長

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たけはら のぶお / Nobuo Takehara

有限会社産業情報化新聞社代表取締役(日本一明るい経済新聞編集長)。1971年3月、関西大学社会学部マスコミ学科卒、同年4月にフジサンケイグループの日本工業新聞社に入社。その後、大阪で中小企業担当、浜松支局記者などを経て、大阪で繊維、鉄鋼、化学、財界、金融などを担当。1990年4月大阪経済部次長(デスク)、1997年2月から2000年10月末まで大阪経済部長。2001年1月に独立、産業情報化新聞社代表に。年間約500人の中小企業経営者に取材、月刊紙・日本一明るい経済新聞を発行している。
 

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