あなたは万が一の大震災に備えていますか 東日本大震災、改めて考えておきたい「教訓」

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東京大学生産技術研究所の目黒公郎教授は、「目黒メソッド」という地震による被害を具体的に想像するための方法を提案されています。先に挙げたような状況設定を行い、地震が発生した直後から自分自身の周囲に起こることを書き出して想定する、というものです。さまざまな条件で想定を繰り返すと、自分が何をすべきかが具体的に見えてきます。

「それもまだ難しい」と感じる方は、自治体が設置している防災体験施設を利用してみるのも1つの方法としてお勧めです。東京都内には、東京消防庁が設置する池袋、本所、立川の各防災館などで地震に限らずさまざまな災害を体験するコーナーがあり、個人での利用も可能です。

起こりうる災害について想定すると、日々の生活の中でいちばん長く過ごす場所がポイントです。すなわち「地震に遭う可能性がいちばん高い」場所でもあるからです。「職場」という人もいるかもしれませんが、全体的に考えれば「自宅」が最も長いという人も少なくないでしょう。自宅を安全にすることが命を守るための第一の対策となります。

まずは安全確保が最優先

1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災では、亡くなった方の8割以上が家屋の倒壊や家具の転倒による下敷き(窒息・圧死)が原因であったことから、家屋の耐震補強や家具の転倒防止が命を守るために重要といえます。

2013年12月に内閣府中央防災会議の首都直下地震対策検討ワーキンググループによって作成された「首都直下地震の被害想定と対策について」という報告では、東京の都心南部に直下地震が発生した場合の季節と時間別の死者数について、発生する人的被害の想定が記載されています。詳しい数字は省略しますが、冬の深夜や夏の昼間には想定死者数のうちおよそ9割が「建物損壊等による死者」とされています。地震火災による死者の割合が増える冬の夕方の場合も、半数程度の人が建物損壊による死者と想定されています。

地震で揺れても、すべての建物が倒れるわけではありません。地震の揺れ方と建物がもつ特性との関係、鉄筋コンクリート造か木造か。建物が立っている土地の地盤もかかわってきます。さまざまな理由がありますが、どの建物が壊れやすいかは一言では言えません。

1つの判断基準として、1981年に改正された建築基準法に基づいているかがポイントとなります。同年6月以降に建築確認を受けた建物は、地震保険の保険料でも差がつけられるほど安全性に違いがあります。材料や構造、地盤などに注意し、必要に応じた耐震補強を行うことが倒壊を防ぐための第一歩です。手間や費用もかかりますが、完璧な対策を立てられないから何もしない、というのは最悪の選択です。「少しでも、より安全な方向へ近づく」を目標に考えて、命を守るための対策をしましょう。

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