アマゾンのリアル侵食に小売りが対抗する手 オムニチャネルで武装する局面に来ている
一方、利用客からは、自宅にいながらにして店舗ごとの価格比較ができることや、いつでも買い物ができるという利便性が喜ばれました。
特に日本の場合、早くて正確、丁寧な宅配便という配送方法が定着しており、現地に行って買うか、お土産でもらうかしかなかった全国各地の名産品(ことに生もの、日持ちのしないもの)ですら、国内どこからでも簡単に購入できるようになっています。このようにECは、日常の買い物に新たな楽しさ、ワクワク感を、消費者にプレゼントしてくれました。
しかし、こうしたメリットはいまや、消費者に特別な驚きを与えるものではありません。生まれながらにして、デジタル環境のなかで育ってきた層も立派な顧客対象になってきましたが、その人たちがリアル店舗を利用しなくなったわけではありません。ただ単に、便利な買い物場所の選択肢のひとつとしてECが定着したにすぎないのです。
オムニチャネルで武装すべき局面に
ECが特別な存在でなくなったいま、利用客に高い満足を提供できる買い物環境は何か。その答えのひとつがオムニチャネルであり、ECだけでは実現できない機能(実物を体験できる、人とのふれあいがある、行ってみないとわからない体験など)をもつリアル店舗にとっては、その存在をあらためて消費者にアピールできる絶好のチャンスが到来しているのです。
日本でもオムニ7、ヨドバシカメラ、カメラのキタムラがオムニチャネルで一定の成果を出せるようになりましたが、導入に苦労している企業もたくさんあります。
その理由は、たとえば在庫のリアルタイム一元管理。確立するためにはシステムだけの話ではなく、物流センターの運営も統合しないとできません。ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が「ユニクロは物流会社になる」と、強力なリーダーシップで物流オペレーションの運営管理力を上げようとしているのはこのためです。
このように一部の企業が消費者獲得に力を入れている一方、ECの浸透で自社売り上げが減っていると危機感をもつ小売業が少ないことを私は懸念しています。本来なら、ECという見えない競合に、対抗チラシや対抗MD(マーチャンダイニング)を打たなければ対抗できないのに、やっている企業が少ないのが現状です。これからの時代を生き残っていくためにも、リアル小売業がオムニチャネルで武装すべき局面に来ています。
小売業で注目されがちなオムニチャネルですが、実はメーカーにもプラスの効果があります。フラッグシップストアで、一般には販売しないこだわり商品を置き、インフルエンサーやイノベーターといわれる先端のファンが、ハイレベルの接客などを含むオムニチャネル体験をする。それによってブランド力が上がり、量販店やスポーツ専門店での量販品の販売も伸びるのです。メーカーも、オムニチャネルで販売力を高められるのです。
導入にあたっては、店員教育がひとつのポイントになります。現場への教育なくして、成功はありません。
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