「雇用の流動化で生産性が上がる」は間違いだ なぜ転職すると賃金が下がるのか
「やってる感」で高い支持率をキープしていると揶揄される安倍晋三政権。このところ首相がご執心なのは、働き方改革のようである。
この点に関連して、大和総研の溝端幹雄主任研究員が最近、興味深い分析を行っている。働き方改革の一環として雇用の流動化を進めれば、持続的な経済成長につながるのか、という問題である。
あらためて指摘するまでもなく、日本経済は長らく低成長にあえいできた。1960年代に年率10%を超えていた実質GDP(国内総生産)成長率は、1990年代に1.5%、2000年代には0.6%まで落ち込んでいる。2010年代は1%超までやや上向いたものの、安倍政権の掲げる実質2%の成長率を達成したのは、近年では2010年度と2013年度くらい。
実際は生産性の低い業種に雇用が流れている
年金や医療の財源を安定的に賄っていくうえで、少しでも高い成長は欠かせない。成長率を高めるため、これまでさまざまな提案がなされてきた。もし雇用の流動化を進めると成長率が高まるのであれば、十分検討に値する。
労働者という立場で考えた場合、気になるのは、雇用が流動化して賃金が増加するのか、それとも減少するのかだろう。「雇用動向調査」を使って年齢階級別に分析したところ、20~30代では転職後に賃金が増加する人の割合のほうが高いが、特に男性は40代後半以降、減少する人のほうが多くなる。
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