通常の航空会社は自社の運航拠点(ハブ)に旅客を一旦集める「ハブ&スポーク」の手法でネットワーク展開を行っている。
それに対しLCCは、ハブとの出入りを是とする従来のビジネスモデルを切り崩し、都市や空港の規模にかかわらず「とにかく乗客需要があるルート」に積極的に参入。「ポイントtoポイント」で繋ごうという姿勢が強い。その結果、首都を無視した地方都市間の国内便はもとより、地方の小空港から他国の大都市へ直行するルートをLCCが独占する、という状況が起こっている。
マカオの航空マーケットを考えた時、ごく近くにアジアの巨大航空ハブのひとつ、香港がある。香港国際空港からマカオへ高速船で直行すると30分ほどで着くため、大手航空会社は香港に集中的に機材を投入している。マカオからポイントtoポイントで移動できるその便利さゆえに、金正男はこのエアアジア便を多用するようになった。「LCCが普及したおかげで、暗殺犯は金正男の移動ルートを特定しやすかった」という説明も成り立つだろう。
液体物に関するチェックが非常に甘い!
空港内で暗殺事件が発生したマレーシアでの航空機移動は事件後、どうなっているのだろうか。筆者は事件から2週間後の数日間、エアアジア便を含む国内線フライトでマレーシア国内を旅行したのだが、驚いたことに液体物に関するチェックが非常に甘かった。
同国で飛行機に乗る際、ペットボトル入り飲料や化粧品を含むジェル類などの大きさなどに頓着する様子はなく、バッグに入れたままこれらのものを通してもまったくおとがめがない。
国際線搭乗の場合は、国際基準に沿って「蓋が閉じられる体積1リットル以内のビニール袋に詰める」という方法が準用されているとはいえ、国内線での「おざなり感」には違和感を持った(ちなみに日本国内線の事情は、以前「プロから見ると日本の「空港検査」は甘すぎる 」で指摘している)。暗殺事件が「女が持っていたクリーム」によりガスが発生したことがわかっているのにもかかわらず、新たな検査基準は目下のところ、求められていないようだ。
今回の事件が一般の利用客に影響をほぼ与えていない点は幸いというべきだろう。しかし、北朝鮮との関係が悪化している今、もう少しセキュリティ面を強化したほうが良いのではないか。奇妙な事件が連発しているマレーシア航空業界が、さらなるトラブルに巻き込まれないことを祈りたい。
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