事件から20日近くが経過した3月3日時点でも、現地メディアは引き続き、犯人とされる女性2人の取り調べの状況を詳細に伝えている。しかし、一般の人々の関心が高いわけではない。これから中国に行く、という地元のイスラム系20代の女性に声を掛けてみたところ、「え、北朝鮮の人の暗殺? そういえば、そんなことがあったわね」とほとんど興味を示してくれなかった。
報道によると、「金正男は女に襲われたのち、空港職員とともに歩いて医務室まで行き、そこで息絶えた」とある。
試しに事件現場付近から医務室まで行ってみた。事件はたまたま、出発ターミナル階の総合インフォメーション近くで起きた。そこで、筆者はインフォメーションのスタッフに「医務室はどこか」と聞き、その案内に沿って向かってみた。医務室は到着階の奥まったところにあり、歩いてみると距離にして200メートル超はあった。出発階からエレベーターを降りて、出迎えの人々でにぎわう到着階を横切って行かなくてはならない。
ストレッチャーや車いすで運ばれたといった話はいまのところ確認できていないので、自力で歩いて行ったことになる。「VXで襲われた金正男が、医務室に着く前に息絶えなかったのが不思議」という感想を持った。
筆者が医務室の前にさしかかった時、韓国人のガイドが「みなさん、早く行きましょう」と団員を呼んでいる声が聞こえて来た。何をしていたのかな、と見てみたら、医務室の前にあるコイン式の自動マッサージチェアでマッサージを受けていた。医務室で倒れた金正男の写真と、同じ民族でもある韓国人がのんきにマッサージという状況。そこに、残酷なまでの「絵の違い」を感じた。
金正男がLCCに乗ろうとしたワケ
「事件はLCC専用ターミナルで起きた」と伝えられた時、「海外で資産運用をしていた御曹司」という金正男のイメージと、「LCCでの旅行」という話がなんともかみ合わず、その落差に驚いた。
しかし目下のところ、クアラルンプールから本人が住むマカオへ飛ぶにはLCCのエアアジア便(現スケジュールで10時50分発)しかないため、「便利な直行便を選んだらたまたまLCCだった」というシンプルな話と考えたほうが理解しやすいだろう。
LCCが席巻するマレーシアを含む東南アジアの航空マーケットは現在、どのようになっているのだろうか。
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