環境先進企業の挑戦<1> イオン−−出店減らしてでもCO2を3割減目指す

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消費者・市民団体から活動のオファーも

6月のある晴れた日曜日。オープンを数日後に控えた栃木県の那須塩原店で、植樹祭が催された。幼稚園児や家族連れ、地元の高齢者グループなど、事前に予定されていた人数を大幅に上回る1400人もの人々が集まり、10万平方メートルもの店舗敷地を巡る生垣に、トチやヤシオツツジなど50種の苗木7000本を植えた。ある若い女性は、この植樹祭に参加するために、はるばる神奈川県から新幹線に乗って訪れたという。イオンは91年から植樹活動を行っているが、最近では地元住民だけでなく別の店舗で植樹を体験した人が「ぜひもう一度」と遠出して参加するケースも増えている。植樹に対する人々の関心は、それほどまで高くなっている。

「メーカーのように技術はないが、お客様と取り組める場があるのが小売りの強み」と土谷常務は強調する。そういう意味では、レジ袋削減も、まさに消費者参加型の取り組み。レジ袋の有料化はイオンが地域に呼びかけて取り組んできた。ところが近頃は逆に、周辺団体から声をかけられることが増えているという。07年度に42店舗だった無料配布中止実施店舗は、今年度160店舗以上と一気に拡大できると見込んでいる。そして、さらに12年度には1000店舗を目指す。

だが、消費者を巻き込んだ環境活動は、試行錯誤の連続でもある。

「温暖化防止宣言」でCO2削減量を「トン」で表記したところ、消費者や社内から「空気に重さなんてあるのか」という問い合わせが殺到した。専門家の間ではCO2を重量で表すのはごく一般的。しかし目に見えないものの重さはイメージしがたいものだ。そこでイオンは、東京ドームや風船で量を説明するように改めた。「消費者への情報発信のやり方が、いかに重要であるかということを痛感した。環境問題に長く携わっていると、気がつかない点も多い」(土谷常務)。

6月には、経済産業省主導でイオンはじめ大手スーパーが参加する「カーボン・フットプリント」の導入に向けた研究会が発足した。カーボン・フットプリントとは、その商品が原料生産からパッケージ廃棄に至るまでにどのくらいのCO2を排出するかを記載したラベルのこと。これを貼ることで、CO2に対する消費者の意識を高める取り組みだ。

「今、自分たちがどのくらいのCO2を排出しているのかを知ることは非常に大切。削減量を考えていくには、まず実態を知らなければならない」と土谷常務もこの取り組みに期待を寄せるが、一方で本格導入にはまだ時間がかかりそうだという。「CO2排出量をただ数字で記すだけで消費者に伝わるのかどうか、浸透させるための方法をよく検討する必要がある。共通の算出方法や基準といった議論も必要になる」(土谷常務)。

今後、日本全体で大幅なCO2削減を実現するためには家庭部門の排出削減が欠かせない。消費者に近いところにいるイオンの経験が生かされる場が増えていきそうだ。

(週刊東洋経済編集部)

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