環境先進企業の挑戦<1> イオン−−出店減らしてでもCO2を3割減目指す
今後5年間でCO2排出を30%削減する--。イオンは今年3月、「温暖化防止宣言」として2012年度におけるCO2総量の削減目標を掲げた。国内大手スーパーで具体的な削減目標を掲げているのはイオンだけだ。
環境経営を掲げるイオンは04年に「地球温暖化防止に関する基本方針」を発表している。これは「京都議定書の精神を尊重し、その目標達成に貢献します」「CO2削減等は本業の中で取り組むことを第一とし、未達分は京都メカニズム活用で補います」という二つの文からなっている。この基本方針にのっとりより具体的な目標にしたのが、今回の数値目標である。数値のコミットメントを行うことで社員の意識を高め、CO2削減の取り組みを一層強化する狙いがある。
30%削減はかなり高い目標だ。06年度、イオンが企業活動の中で排出したCO2の総量は370万トン。この3割減は260万トンだが、現在の政策以外何も対策を施さなかった場合、新規出店などを勘案すると12年度の排出量は445万トンまで拡大する。これを260万トンに抑えるとなれば、実質的な削減量は40%以上になる。岡田元也社長は「挑戦的な目標だが、新店出店を減らしてでもCO2削減を行う」と、その覚悟は強い。
ただ、この削減目標は無謀なものではなく緻密に計算されている。イオンには、これまでに実施してきた取り組みによるCO2削減実績のデータがある。たとえば、山形県の三川ショッピングセンター(SC)の風力発電では、1年間でCO2を53トン削減できた。こうした過去の実績から具体的な取り組み計画を積み上げ、実現可能な削減目標を定めたのである。
イオンの店舗は省エネ技術の実験場
具体的な取り組みは下表のとおり、多岐にわたる。技術や設備の導入といったハード面と、社員の意識づけといったソフト面の双方で示している。
まず、ハード面での代表的な取り組みは「エコストア」だ。エコストアには、ソーラーパネルや省エネ設備が導入され、店舗運営によって排出されるCO2を削減。「メーカーが技術を発揮する場としてくれれば」(環境担当の土谷美津子常務)と省エネ技術を貪欲に活用する。
7月3日にリニューアルオープンする苫小牧SCでは、ガスコジェネシステムや冷温水ポンプインバーター、LEDサインなどを採用し、店舗運営によるCO2を21%削減できると見込んでいる。なお太陽光発電システムは、12年度までに200店舗に導入する予定だ。
ほかにも、鉄道輸送を優先することで、トラック輸送に比べて90%のCO2を削減、包装材やコンテナに植物から作られるバイオマス素材を使用することで6万トンのCO2削減など、物流、包装、商品開発の点でも、CO2削減に向けた取り組みは枚挙にいとまがない。
ソフト面では、社員の意識改革に向けた取り組みが中心だ。傘下の食品スーパー、マックスバリュ東北では、一定の電気量を超えると個々人の携帯電話に連絡が入るシステムを導入した。社員に電気量を知らせることで、使用していない場所の電気をこまめに消すという意識づけを行うのだ。これが実に半年で36トンものCO2削減に結び付いた。
「環境への取り組みは、きっかけさえあれば多くの人が率先して取り組むもの」と、土谷常務は言い切る。実際、土谷常務は社内でも「環境保全の仕事をしたいがどうすればいいか」との相談を頻繁にされるようになったという。