パン好きが殺到!横浜「パンのフェス」の凄み 史上空前のブームで増えるご当地パン祭り

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経済産業省の商業統計によると、パンの製造小売業者の数は、1997年の約1万2600店をピークに減少が続いていた。ブームの陰で、町のパン屋が次々と閉店する問題を抱えているのは、横浜市だけではない。

一方で、1990年代後半以降、フランスの原料を使うなどした本格派フランスパンを販売するおしゃれなパン屋が、次々とできて人気を集めている。パンブームは最初、そういう本格派フランスパン人気から始まった。2009年11月の『Hanako』パン特集を契機としてパン屋自体に関心が移り、ここ数年は食パンやコッペパンなど昔ながらのパン再発見へと展開している。消費者の関心が深まり、人気のすそ野が広がっているのだ。

パン屋の数は1500店増加

ブームの後押しを受けてか、2012年から2014年にかけて、パン屋の数は約1500店増加した。また、人気店の中には、後継者がトレンドに合わせたリニューアルを試み、成功した店もある。ブームは、新旧交代により業界が活性化し、商品の品質を上げたことから生まれたと言える。

しかし、恩恵が業界に広く浸透するのは、まだこれからかもしれない。実は「パンのフェス」は初回立ち上げには苦労している。「出店者の10倍ぐらい断られた」と幅野氏は明かす。イベントに対する信頼性が低かったことや、通常営業以上のパンを製造する余力がないなどが理由だった。しかし大盛況という結果が出たことで、昨年の出店者のほとんどが今年も出店するほか、新規出店の交渉もスムーズに進んだという。

栃木・那須から出店する「ベーカリー ペニーレイン」(写真:ぴあ提供)

今年出店する地方店の中には、「人気店の中で自分たちの力を試したい」「将来、首都圏に出店したい」と意気込むところもある。首都圏中心に展開するブームを活用し、実力をつけて知名度を上げようとする頼もしい店も登場しているのだ。パンブームと各地に広がる「パン祭り」の波によって、パン業界も新たな局面を迎えている。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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