成果それとも時間?「人事評価」が変わる日 必要なのは「評価とスキル」の2つの管理

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取材した企業の人事部からは、「何時間働いたのか?=時間」と「どれだけの結果を残したのか?=成果」の両方で評価して、かつ矛盾が起きないようにしたい。特に経験豊富で仕事ができる社員たちから、働いた時間で評価されることによってモチベーションが下がる可能性があるとの意見が出ていることに悩んでいる、との声がありました。

上司の指示により仕事を行うことがメインの若手社員と違い、ある程度キャリアを積むと自分の裁量で仕事をするようになります。そんな中、定時に一生懸命仕事をして時間内に職務を全うしている人がいる一方、定時の労働時間中はダラダラと手を抜いて過ごして残業代を得ようとする人もいる。ならば、時間による評価を外すべきでは、との意見をいただきました。

こうした意見は、人事部や経営陣だけでなく、仕事をまじめに行う管理職層や専門職からも、よく耳にします。このように、長時間労働の撲滅のために時間管理の徹底が叫ばれる中で、時間管理をやめようという対極的な機運もあることは押さえておきたいものです。

社員の評価とスキルの2つを管理

これまで何度か頓挫してきたホワイトカラーエグゼンプションですが、今後そう遠くない将来、実施されることにはなるでしょう。そうなると、職場ではどのような変化が起きるでしょうか?

この働き方が導入されると、職場に大きな変化がもたらされます。時間ではなく「成果だけ」で報酬が支払われるワークスタイルの社員が登場するのです。当然ながら、成果として評価される中身に対して「納得のいく評価」が求められます。さらに納得がいく評価をするためには、社内での相対的な比較だけでなく市場価値との適合性なども踏まえて、的確な人事評価の仕組みを構築することが必要となります。

たとえば、エンジニアが時間で管理されることなく専門家として期待される成果とは何か? 世間において同様の報酬を得ているエンジニアが期待されていること=スキル要件を具体的に明文化。そして、その期待をすり合わせておく必要があります。さもなければ、

「自分は何を期待されているのかわからない。なので、転職します」

などと、人材が流出することにもなりかねないでしょう。時間と成果を組み合わせて「あいまいに」ぼかしていた人事評価では済まされなくなることでしょう。

当然ながら、評価者に対して求められる能力も厳しくなります。説得力のない評価では、現場の不満が爆発してしまいます。そうならず、的確な評価をするためには、評価者自身がある程度頻繁に部下からレビュー(精査)を受ける必要にも迫られることになるでしょう。

そう考えると、ホワイトカラーエグゼンプションを確実に実行するためには、筆者は「タレントマネジメント」が必要ではないかと考えています。

タレント・マネジメント・システムは、社員の評価とスキルの2つを管理する仕組みのこと。単なる人事評価をして終わりではなく、スキル管理も同時に行い、継続的なスキルアップを目指します。こうすることで、部下の成果が不十分なときに、理由を保有スキルから明らかにすることができ、さらなる成長に向けて前向きな指導が行えます。

評価とスキルを管理することで、評価者が変わっても安定的な人材マネジメントも可能となります。こうした人事面での仕組みをしっかり構築するなど、社員の納得性を高める努力を会社がすることで日本版ホワイトカラーエグゼンプションは生かされることになるのではないでしょうか? いずれにしても、この働き方が日本でどのように根付いていくのか、今後も要注目です。

高城 幸司 株式会社セレブレイン社長

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たかぎ こうじ / Kouji Takagi

1964年10月21日、東京都生まれ。1986年同志社大学文学部卒業後、リクルートに入社。6期トップセールスに輝き、社内で創業以来歴史に残る「伝説のトップセールスマン」と呼ばれる。また、当時の活躍を書いたビジネス書は10万部を超えるベストセラーとなった。1996年には日本初の独立/起業の情報誌『アントレ』を立ち上げ、事業部長、編集長を経験。その後、株式会社セレブレイン社長に就任。その他、講演活動やラジオパーソナリティとして多くのタレント・経営者との接点を広げている。著書に『トップ営業のフレームワーク 売るための行動パターンと仕組み化・習慣化』(東洋経済新報社刊)など。

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