「お客様は神様」は本当に正しいのか? 顧客第一主義の傲慢さを考える

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言い訳が多すぎる

そしてもうひとつ根本的に覚える違和感があります。

それは、顧客第一主義の経営というのは、そもそも回り回って自社の首を締め、さらにお客様自身をも不幸にしているのではないかという仮説です。

私の所属するバス会社は、旅行代理店業もやっています。旅行代理店で新しいツアー商品を作るとき、そのチラシには旅行商品が具体的にどんなものかわかるための説明を入れます。バスガイドの有無や添乗員の有無、金額やコース……。これらはすべて商品購入に当たってお客様が知りたい情報です。当然に必要な情報です。

そして最後に入れるのが、細かい注記です。旅行の最小催行人数やキャンセル料発生の時期、さらには本当に小さい文字で定型文としての約款を記載します。これらはお客様が知りたい情報である場合もありますが、多くの場合、不測の事態が発生した場合の言い訳的説明です。要するにお客様のためというより自分たちのためです。

そのような中で最近増えているのが「(イメージ)」という単語です。写真でもコースの説明でもやたら「(イメージ)」を入れるようになりました。これこそまさに究極の言い訳です。少しでもパンフレットと異なる内容、たとえばホテルの宴会で写真と違うメニューが出てきたとか、車窓から見える景色が桜満開なのに実際見たらまだ7分咲きだったとか、ひどい場合は写真の観光地の天気は晴れていたが実際に観光地に来たら雨が降っていたとか、そういった内容に対してすべて言い訳できるようにしているわけです。

先日の話です。某大手旅行代理店の新聞広告でイメージキャラクターに有名女優を起用していました。そのチラシには、有名女優がポーズをとる傍らに「(女優名)さんは、ツアーには同行しません」と書かれていました。行き過ぎた自己防衛であると感じる一方で、ここまでお客様に気を遣わないと成立しないのかと、何とも言えない気持ちになりました。

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