残業上限60時間を「画餅」にさせないために まだまだ長時間労働、これもゴールではない

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単に法律で残業時間の上限を制定するだけではなく、実効性のある施策を(写真:プラナ / PIXTA)

36(サブロク)協定による労働者の残業時間の上限を「年720時間(月平均60時間)」とすることを、経営側が受け入れ、残業時間の上限となる具体的な時間に対する労使の足並みがそろった。2月14日に開かれた「働き方改革実現会議」で事務局案として提示され、会議に参加する経営者側の経団連、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会の3団体が受け入れる方針を決めた。

細部の設計や運用を誤ると「絵に描いた餅」

もともと労働基準法では、労働者を1日8時間、1週間40時間を超えて働かせてはならないと定められており、これに違反すると「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される罰則も用意されている。

それでも企業が労働者を残業させるようにするためには、もともと雇用契約の条件に残業する(場合がある)ことが明記され、残業時間を労使間で交わした「36協定」の限度内に収めるとともに、合法的な残業代(割増賃金)を支払う必要がある。この場合に、残業は合法となる。

残業時間の上限に一定の歯止めをかけている36協定は、労働基準法第36条に由来するのでこのような名称で呼ばれている。「会社と労働者代表が合意をして労使協定を締結した場合は、1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えて働かせることができる」と定められており、ほとんどの会社はこの「36協定」を根拠として残業をさせているが、今回議論されているのは、この36協定による労働時間の上限を定めようというものだ。

これまで法律的には事実上青天井だった長時間労働に歯止めをかけるための第一歩であることは間違いないが、細部の設計や運用を誤ると「絵に描いた餅」になりかねない。私には少なくとも4つの課題が見える。

次ページ第1の課題は
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