残業上限60時間を「画餅」にさせないために まだまだ長時間労働、これもゴールではない

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単に罰則付きで残業時間の上限を設けて「あとはルールを守って頑張ってね」というくくりだと、対応できない中小企業が開き直って、逆にヤミ残業を助長しかねない。

そうならないようにするため、残業隠しに36協定違反よりも重い罰則を与えるというような立法政策も考えられなくはないが、それよりも、国として中小企業の業務効率を積極的に支援し、長時間の残業をなくしていくほうが建設的な方向性であろう。

たとえば、目下、経済産業省が平成28年度第2次補正予算で実施している「サービス等生産性向上IT導入支援事業(通称:IT導入補助金)」が良い例である。これは、経済産業省が認定した業務効率の改善に資するITツールを導入すると最大で100万円の補助が受けられるというもので、顧客管理、会計、給与計算、受発注など幅広いITツールが補助金の対象となっている。

こういったITツールを導入して、手計算やエクセルで時間をかけて行っていた業務が自動化や効率化されれば、その効果として残業時間も短縮につながる。IT導入補助金は2月28日で受付終了になるということであるが、今後もこのような補助金を拡充させていくのが望ましい。

また、IT以前の問題として、トヨタ生産方式で「探す運ぶは仕事にあらず」といわれているように、整理整頓がされていなかったり、レイアウトが適切ではなかったりする職場では、無意識に大きな時間のロスが生じてしまっている可能性がある。あるいは、長時間の会議や無駄な資料の作成がロスを生んでいる可能性もある。ただ、こういったロスは自社内では当然のことと思っていて、第三者が指摘しなければ気づかないケースも多々ある。そのため、専門家から業務効率改善のためのコンサルティングを受けるための費用に関する補助金の創設なども検討する価値があるのではないだろうか。

子会社や下請事業者が無理をしないために

第3は、「子会社に対する親会社」や「下請事業者に対する親事業者」の労務管理上の責任を、何らかの形で認めることの検討である。

たとえば、私が過去に労務相談を受けた会社は、親事業者が展開する24時間サービスの対応のため、つねに社員を待機させておかなければならず、長時間労働が恒常化していた。

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