加齢に伴う「不眠症」が実は軽視できないワケ 「寝なくても大丈夫」なわけではない
不眠症によって生じる日中の過度の眠気はそれ自体が危険だが、アビダン教授によると、慢性の不眠症は「認知障害や錯乱、精神運動抑制、ケガのリスクの増加などにつながることもある」という。しつこい不眠はうつ病の原因や結果である場合もある。老人ホームの入居者に対する調査の結果、不眠症を放っておくと転倒や骨折のリスクが高まることも示された。
不眠症には2つのタイプがある。1つは、睡眠中に発生する問題から生じるタイプの不眠だ。具体的には、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群(高齢者の15%~20%を悩ませている)、周期性四肢運動障害などだ。パーキンソン病の兆候ともなる、見ている夢に合わせて体が動く状態なども不眠につながる。
一緒に寝ている人に指摘されなければ、こうしたタイプの不眠の人は、なぜ眠りが妨げられるのかわからないかもしれない。正確な診断を行うには、多くの場合、専門家による睡眠の観察が必要になる。呼吸や心拍数、血圧、体の動き、睡眠の段階ごとの時間などを記録する装置を装着し、研究所で1晩か2晩眠るのだ。
もう1つの不眠症のタイプはもっと一般的なものだ。原因となるのは、医薬品の副作用や、行動に起因する要因、たとえば不適切な時間のカフェインやアルコール、ニコチンの摂取、昼寝などだ。また、環境によって睡眠が妨げられる場合もある。たとえば、時差ボケや寝室内の過剰な音や照明、特に電子機器のブルーライトなどだ。
不眠を生じさせる可能性のある疾患は多数あるが、例を挙げると、心不全や胃食道逆流症(GERD)、肺病、関節炎、アルツハイマー病などがある。可能であればこれらの病気を治療することが、不眠症の改善にもつながる。
不眠への心配がさらに不眠を招く
不眠の原因にかかわらず、眠れないことを予感したり、夜中に目が覚めたあとにもう眠れないと考えると、その反応がしみついてしまう。ベッドで何時間も横になりながら眠れないことを心配すると、その不安がさらに眠る力を妨げていく。
睡眠について心配すればするほど、事態は悪化していく可能性がある。夜半過ぎに目が覚めて眠れないとき、私はたいてい起き出して何か有益なことをする。それが不眠の呪縛を取り去ってくれるのだ。何か重要なことを忘れそうで心配なときには、ベッドの横に置いてあるメモ用紙に書いておく。そのときに明かりはつけないようにする(夜中に明るい光を浴びると、体内時計をリセットしてしまうことがある。トイレに行くときには、足元を照らす常夜灯を使うとよい)。