加齢に伴う「不眠症」が実は軽視できないワケ 「寝なくても大丈夫」なわけではない
不眠症は夜間に侵入する泥棒のようだ。何百万人から、特に60歳以上の人たちから、体力回復に必要な睡眠を奪っていく。
不眠症の原因は多数あり、年を取るにつれて不眠症の人の数も深刻さも増していく。しかし、定期的な検診などでは不眠症は見過ごされ、それにより高齢者の生活の質が下がっていく。加えて、身体的疾患や認知障害などの精神的疾患を引き起こしたり、悪化させたりもする。
たいていの人は一時的な不眠を経験したことがある。夜になったのに、体が眠り方を忘れてしまったようになり、必要な時間分の睡眠が取れなくなるのだ。そのときはつらく感じるが、不眠症の症状――眠れない、眠りが続かない、夜中や早朝に目が覚める――が毎晩ある人たちと比べればわずかなものに見える。
米国立老化研究所が1995年に、3つのコミュニティに住む65歳以上の9000人を対象に行った調査によると、42%が入眠と眠り続けることの両方が困難だと答えた。現在では、体のリズムを乱す電子機器の画面を就寝前に見ている人も多く、この数はずっと大きくなっている可能性が高い。
慢性化すると体や心に影響も
不眠症は「症状であり、病気の診断ではない」。こう話すのはアロン・Y・アビダン教授だ。不眠症は疾患の手掛かりになる場合もあり、しつこく続く場合には、真剣に対処しなければならない。アビダン教授は、カリフォルニア大学ロサンゼルス校医科大学院の睡眠クリニックのディレクターだ。
何カ月も不眠が続くと非常につらいものだが、不眠が6カ月以上続いて慢性的になると、身体・精神・社会的に深刻な問題を引き起こす可能性もある。