「鳥貴族になりたい」競合の仁義なき模倣合戦

専門居酒屋が台頭する時代がやってきた

販売戦略で最も変わったのは、「和民」時代には中生ビールを500円前後売っていたのを、容量を減らし「ミライザカ」で299円、「三代目鳥メロ」で199円と思い切って値下げしたことである。従来ワタミは居食屋を看板にビール、サワーなど飲料で儲けるビジネスモデルを構築してきた。「ミライザカ」「三代目鳥メロ」の低価格業態では、たくさん飲ませてフードメニューを増やし、客単価3000円に届くようなモデルに変更した。今のところは好調のようだが、新規業態が既存店になる1年後に前年対比をクリアできるかどうか、まだ予断は許さないだろう。

ただ、鳥貴族のまねをした焼き鳥業態がこのまま増えれば、かえって鳥貴族の価値が相対的に評価され、鳥貴族の人気が一段と高まる現象もありうる、と筆者は予想している。2009年から2011年にかけて起こった激安・均一価格戦争では鳥貴族が大勝した。まねをする側が淘汰・再編の憂き目を見る可能性があるということだ。

鳥貴族に死角は少ないが店舗数が年間100店舗も増える中で、最大の問題は店舗で働くパート、アルバイトを確保し、店長の下で教育研修がきちんとできるかどうかだ。2016年8月、「鳥貴族 南柏店」で酎ハイの焼酎に誤って消毒用アルコール製剤を使うという問題が起きたが、現場の従業員の確認不足だった。

鳥貴族のもう一つの死角になりえるのはメイン食材である国産新鮮鶏肉が鳥インフルエンザの流行リスクをつねに抱えている点だろう。鳥貴族では鶏肉の調達ルートを複数に分けており、安全・安心を確保している。

居酒屋市場の構造変化が始まった

居酒屋業界では2009~2011年にかけて起こった激安・均一価格戦争と2011年3月に発生した東日本大震災を経て、大手居酒屋チェーンの迷走と没落がハッキリしてきた。鳥貴族に代表される専門店型チェーンが台頭し、居酒屋市場の構造変化が始まった。

コロワイドのようにM&A戦略で総合外食企業に脱皮しようとしているスケールの大きな企業はともかく、総合型の居酒屋事業に力を注いできたモンテローザ、ワタミなどの居酒屋事業が予想外に弱点を抱えていたことが明らかになった。一方、「はなの舞」などを展開するチムニー、「庄や」「やるき茶屋」などを展開する大庄が案外強いのは、鮮魚を主食材とするチェーンで、メインの顧客層が中高年層だからだ。

鳥貴族以外で近年、台頭している特徴的な専門居酒屋は、クリエイト・レストランツ・ホールディングス傘下のSFPダイニングが展開する鮮魚・浜焼居酒屋「磯丸水産」(120店、鳥良など53店)だ。24時間営業。新鮮な魚を漁師小屋風に七輪で焼いて食べるのが受けてきたが、直近決算では「磯丸水産」の伸び悩みも明らかになっている。同社は「食の専門店集団を目指す」と、専門店化を追求している。

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