「鳥貴族になりたい」競合の仁義なき模倣合戦 専門居酒屋が台頭する時代がやってきた

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次に「大阪伝統の味 串カツ田中」(串カツ田中)だ。社長の貫啓二は鳥貴族社長の大倉がリーダーを務める「Tの会」のメンバーである。貫は2002年に大阪で独立開業、その後東京に進出した。2008年12月に開店した直営1号店の串カツ専門店「串カツ田中 世田谷店」が大ヒット。2012年1月、FCで「串カツ田中 学芸大学店」を開店、大繁盛した。これを機に外食オーナー経営者たちがFCに加盟し、急激に店舗数を増やした。今年9月には東証マザーズに上場、直営・FCで百三十数店舗展開している。

居酒屋業界も同じ道をたどっている

現在の居酒屋業界は20~30年前に流通業界がたどったのと同じ道をたどっている。流通業界では1957年(昭和32年)に創業されたダイエー(現イオングループ)が、価格破壊を掲げて総合スーパー(GMS)を展開、イトーヨーカドーなどとGMS全盛時代を築いた。

ダイエーは1970年代に総合百貨店の三越(現三越伊勢丹ホールディングス)の売上高を追い抜き、流通業界トップに立った。ところが1991年のバブル崩壊により不動産の含み益で事業を拡大発展させてきたダイエーが挫折した。代わって「ユニクロ」「ニトリ」「しまむら」「ヤマダ電機」など価格破壊の専門店チェーンが急浮上。ダイエーなどGMSから顧客を奪った。

今、居酒屋業界でも同じようなことが起こっている。価格破壊の焼き鳥専門店チェーンの鳥貴族を中心に他にも専門店チェーンが急激に台頭、居酒屋市場に地殻変動を起こしているのだ。

鳥貴族創業者の大倉忠司は自著『鳥貴族「280円均一」の経営哲学』の中でこう書いている。

〈……価格とは、店舗の賃貸料、光熱費、人件費、材料費など、さまざまな要素が足し合わされて決定されるもの。いたずらに価格を下げようとすれば、店舗の設備品質が低下したり、人件費を下げざるを得なかったり、あるいは品質の低い食材を調達しなければならなかったりと、どこかに悪い影響が出ざるを得ません〉
〈味も、価格も思想です。思想なきメニュー、思想なき価格は経営的な無理を生じさせることにほかならないのです〉

居酒屋市場全体が縮み、インバウンド需要に活路を求める状況の中で、今後は経営に無理を重ねている居酒屋チェーンは脱落し、M&Aで呑み込まれ、淘汰・再編が進むと筆者は見ている。その渦の中心には鳥貴族の快進撃があるはずだ。

(敬称略)

中村 芳平 外食ジャーナリスト

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なかむら よしへい / Yoshihei Nakamura

1947年、群馬県生まれ。実家は「地酒の宿 中村屋」。早稲田大学卒。流通業界、編集プロダクション勤務、『週刊サンケイ』の契約記者などを経てフリーに。日刊ゲンダイの「語り部の経営者たち」にレギュラー執筆、ネット媒体「フードスタジアム」に「新・外食ウォーズ」、「ビジネスジャーナル」に「よくわかる外食戦争」などを連載。

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