2014年には鳥貴族の看板から内外装、メニュー、コンセプトまでがそっくりな「ジャンボ焼鳥 鳥二郎 全品270円均一」(本社・京都市、運営:秀インターワン)が出現した。現在までに約20店舗を展開している。鳥二郎に対しては鳥貴族も不正競争防止法違反で訴え、訴訟に発展したが、後に和解した。また、全国約220店舗「や台やグループ」のヨシックス(名古屋市)は「全品280円居酒屋 ニパチ」を中部、関西、関東などに56店舗展開している。ペンでメニューにタッチするオーダーシステム「デリタッチ方式」を導入、人件費を削減している。「ジャンボ焼とり」「釜めし」などは鳥貴族の人気メニューと似ている。
業界トップのモンテローザも鳥貴族旋風にあおられている。既存店の「白木屋」「笑笑」などが、同じ飲食ビルに後から出店して来る鳥貴族と競合すると、閉店や業態転換に追い込まれるケースが増えてきたからだ。
モンテローザも鳥貴族旋風にあおられている
モンテローザは居食屋「和民」(ワタミ)を模倣したような「魚民」をはじめ、宮崎地鶏「塚田農場」(エー・ピーカンパニー)を彷彿とさせる鹿児島地鶏「山内農場」、「大阪伝統の味 串カツ田中」(串カツ田中)と似た「俺の串揚げ 黒田」など、成功する店舗を追うような新業態を開発してきた。
鳥貴族でも同様のことが起こるのは時間の問題と見ていたが、それが2016年7月にオープンした焼き鳥専門店チェーン「豊後高田どり酒場 全品280円均一」の1号店であった。鳥貴族の店舗の内外装から看板、そして飲料・フードメニュー、価格までが似ている。
そして1号店を出してからたったの2カ月で29店舗、2016年12月末現在で46店舗展開し、鳥貴族に徹底抗戦を仕掛けている。例えばJR中央線の武蔵境駅北口前の5階建ての飲食ビルで「笑笑」を4~5階で営業していたが、2階に「全品280円均一」の鳥貴族が出店すると、「笑笑」の既存店を「豊後高田どり酒場 全品280円均一」に業態転換した。主戦場の首都圏などでこういうケースが増えている。
居酒屋市場の伸びが期待できない中で、全国に2000店舗以上展開するモンテローザが鳥貴族からシェアを奪われないためには、このような潰しのマーケティングを展開せざるを得ないのだろう。一方、鳥貴族も今や500店舗を超え、2017年7月期には600店舗を実現しようという一大チェーン店である。モンテローザにしてもこの「豊後高田どり酒場」で鳥貴族の攻勢を防げないようだと、苦しい展開になりかねない。
ワタミも今年度(2017年3月期)上半期に総合型居酒屋の「和民『坐・和民』」を「ミライザカ」に32店舗転換、「わたみん家」を焼き鳥新業態「三代目鳥メロ」に44店舗転換し、復調傾向にあるという。最大の変化はブラック企業とたたかれた「和民」の名称を隠したことだ。
「ミライザカ」は「みちのく清流若鶏の唐揚げ」と「ジムビームハイボール199円(税抜)」「生ビール299円(税抜)」が看板メニューだ。「三代目鳥メロ」はこれも鳥貴族を意識したと思わせる業態で、「スーパードライ中生199円(税抜)」を目玉に、焼き鳥、串揚げを売りにしている。ワタミでは今年度中に「ミライザカ」と「三代目鳥メロ」合計で100店舗を新業態に転換する方針だという。
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