保険の銀行窓販で気をつけるべき5ポイント 銀行員は「良心」で売っているわけではない!

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オーストラリアなど諸外国の債券で運用する投資信託には、1年間にかかる費用が0.1%台の商品もありますから、保険商品の手数料は高めだと感じました。「一時払い保険料が100万円の場合、怪しい助言に3万5千円もの謝礼を払うようなものだ」と想像してみて、「検討に値しない」と確信した次第です。

ちなみに「購入時の手数料が無料で、運用期間中0.1%台の手数料で済む投資信託もあります。いきなり3.5%の手数料がかかるのは明らかに不利ではないですか」と私見を述べると「投信と違って、105%が約束されている点をお客様には評価していただいています」と、おすすめ理由が繰り返されただけでした。

消費者が自身を守るために

銀行員の立場から言えることは限られているのかもしれません。あるいは、販売促進につながる情報しか学べない職場環境なのかもしれません。いずれにしても、読者の皆さまには、ニッセイ基礎研究所の「豪ドル投資の魅力とリスク~過去の運用成績と今後のポイント(2016年06月30日)」というレポートや、金融庁の「平成27事務年度 金融レポート」のご一読をお勧めしておきます。

前者には、豪ドル投資について、販売側が十分伝えていない営業面で不利な情報も書かれていますし、後者には、保険の手数料等に関して踏み込んだ記述(65~68ページ)があります。

5 相談相手の「好感度」で判断しない

ここまで書いてきたように、商品説明は納得できないものでした。それでも、最後には「外貨での運用に関する基本的な知識などをもたない人は、推奨される保険に加入するのではないか」と感じました。なじみが薄い金融商品を提示されると、相談相手の「好感度」で決めてしまうお客様もいるからです。

そうなると、保険会社の営業職員や代理店の担当者よりも銀行員を選ぶ人が多いかもしれない、と感じたのです。ギラギラしたところがないからです。それは、来店型の保険ショップが普及した一因でもあると思います。旧来の訪問型セールスに比べて、お客様の来店を待つショップの店員のほうが、消費者からすると「(商品を)売り込まれる」イメージが薄いと思うのです。

銀行は保険販売以外の業務も行われているせいか、販売窓口という雰囲気も希薄で、より消費者のセールスに対する警戒心が緩む気がします。そこが要注意だと思うのです。

もとより、金融商品の販売にかかわる人と消費者の関係は「利益相反」です。保険会社の営業担当者でも保険ショップの店員でも銀行員でも、販売側は手数料が高い商品を売るほど潤います。一方、消費者にとっては手数料が安い商品ほど「確実なマイナス」を抑えられる良品なのです。商品についてよくわからないからといって、信用できそうな「人で選ぶ」のは危険なことなのです。

現状、銀行窓口で販売されている保険で検討に値するのは、住宅ローン返済にかかわる保険や、相続対策に使える保険くらいだと思います。それらの活用についても、消費者が自身を守るためには、商品販売から報酬を得ていないファイナンシャルプランナーなどに、相談料を払って助言を求めることをお勧めします。

後田 亨 オフィスバトン「保険相談室」代表

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うしろだ とおる / Tooru Ushiroda

1959年、長崎県出身。長崎大学経済学部卒。1995年、アパレルメーカーから日本生命へ転職。営業職、複数の保険会社の商品を扱う代理店を経て2012年に独立。現在はオフィスバトン「保険相談室」代表として執筆やセミナー講師、個人向け有料相談を手掛ける。『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)ほか、著書・メディア掲載多数。

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