「自営業で、退職金はなく公的年金額も会社員より少ないので、老後資金づくりに有利な方法を知りたい」とも伝えていたので、「まずは『確定拠出年金』の利用をお勧めします」といった助言を期待しましたが、高望みだったかもしれません。
最優先で確認してもらいたい点だけれど
確定拠出年金の利用で税負担が軽減される利点は、他の金融商品で見込める運用益などより確実かつ大きいはずなので、最優先で「ご存じですか? 利用なさっていますか?」と確認してもらいたいところです。
とはいえ、窓口の銀行員を責めることはできません。保険商品の販売によって得られる手数料は、銀行の大きな収益源です。銀行窓口で働く筆者の知人に尋ねたところ、「200万円以上の預金がある人には投資信託などより手数料が高い保険商品を勧めるように上司から指示されている」とのこと。銀行員は、銀行の収益増に貢献する商品を勧めてくるのが当然であり、個人の良心に期待するのは甘い、という認識が必要です。
3 「金融機関に勤務している」=「おカネのプロ」ではない
「通貨指定型個人年金保険(豪ドル建て)」を勧める理由を聞くと、「積立利率が1.88%と高いため、5年間で『払戻額÷払込保険料=105%』になる、払い戻し率が契約時に約束されている点が、投資信託などとは違って心強い。しかも、運用期間中に105%に達すると自動的に成果を確定するので、多忙な人も安心して運用を任せられる」と言います。
しかし、105%という払戻率は、為替レートに大きく左右されます。円高が進めば、豪ドル建てではプラスでも、円換算ではマイナスになることもあります。為替レートが20~30%くらい上下することは珍しくありませんから、5年後の105%はありがたがる払戻率ではないはずです。
ところが「為替リスクは3年程度では心配ですが、5年・10年と長期で見ると安定していきます」と笑顔で断言します。これには驚きました。「3年先の為替レートは、たとえば3カ月先より予想が難しく、5年先・10年先ともなると、より不透明なはずです」というのが常識的な説明でしょう。
特に知識がない人にあたった可能性も考えられますが「相談相手の質にはバラつきがあっても不思議ではない」「金融機関に勤務していても、一部の商品の特徴を覚えているだけで、『おカネのプロ』ではない」と認識しておくほうが無難でしょう。
4 「手数料」は質問しなければ教えてもらえない
昨年秋から都市銀行などが一部の保険商品で開示することにした「手数料」については「お客様が聞かなければ触れられない」と、ある保険会社の人から聞いていました。実際、そのとおりでした。
商品説明が1時間近く経過した時点で「ところで手数料はどれくらいですか?」と尋ねるまで、言及されなかったのです。今回、提示された「通貨指定型個人年金保険」では、契約時費用は3.5%。積立利率保証期間は5年なので、年率にならすと0.7%になります。
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